2018年12月2日 AJCCファイナル

2018年12月2日。
私は六本木ヒルズクロスポイントにいた。
かつて放送制作をしていた頃にはアークヒルズによく来ていたが、最近はクロスポイントばかり来るようになった。
今年のAJCC(オールジャパンクルーコンテスト)のファイナル(決戦)の会場として、このクロスポイントにあるマクドナルド六本木ヒルズ店が今年選ばれた。
朝マック時間から乗り込み、コンテストの模様がよく見える席を確保して待機した。

到着するなり早々から声をかけてくださる本社の方もおり、辛口な記事が売りの的な〇〇としては若干の気負いもありつつ、次々と来場する関係者に目を配る。

去年のファイナルで声をかけてくださったハンバーガー大学の方が今年も私を見つけるなり声をかけてくれた。あらゆるイベントに顔を出す私だが、数回程度しか絡みの無い私のことを覚えてくれているのは嬉しいし、その場でもマクドナルドについて意見を丁寧に聞き出す姿には、さすがはピープルビジネスの人だと感心させられる。

今年のAJCC開催においては、異例な展開となった。まずは12月開催であるということ。これは今年度重なった自然災害により、足並みが整わずで後ろ倒しになったと聞いている。そして会場が六本木ヒルズ店であるということ。ここ数年、1号線池上店で開催されていただけに、何かしらの意味があるのかと思われる。そして、その六本木ヒルズ店とは別に、朝霞三原店と会場を二分しての開催となったこと。「ドライブスルーランナー部門」は六本木ヒルズ店にドライブスルーが無いので、別会場ということだろう。
そもそも、毎年のように1号線池上店を選べば良いのではないかと思うが、それにはある意図が見える。それは後述する。

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色々な想いが交錯する六本木ヒルズ店

六本木ヒルズ店はユニークな店舗建築だ。
1階は六本木通りに面し、入るとすぐに「マックカフェバイバリスタ」のブースがあって、喫茶店のような雰囲気だ。1階から2階へは店内からは階段とエレベーターで移動できるが、六本木ヒルズ森タワー側から自由通路を通ってダイレクトに入店できる2階部分はカウンター、キッチン、客席がある。一般的なマクドナルドのメニューは2階でのみ販売する。二つのフロアをセパレートし、クロスセル(双方の商品を双方のカウンターで受ける)をしないので、適度にトラフィックを分散できているし、バリスタはドタバタせず静かに寛ぎの空間を確保できる。

AJCCはマクドナルドクルー(アルバイト従業員)の技術コンテストだから、その働きを見られなければ意味がない。昨年まで開催されていた1号線池上店は、キッキンとカウンターが1階で、客席が2階だったから、観戦しようとすると1階で立見になってしまう。そういう点でも六本木ヒルズ店での開催はありがたい。

審査はお昼少し前からスタートした。

全国から集結したファイナリスト達は、それぞれに燦々とオーラを放ち、六本木の圧倒的なインカムで溢れかえる雑踏の中においても、一際輝きを放つ!その存在感たるや、まさにマクドナルドの宝といえる。

まず驚いたことがあった!
以前のこの記事に書いた、秀逸なSW(スウィングマネージャー)がファイナルに現れたのだ!私は以前チャンピオンを予測して当てた事があるが、「やっぱりな」と思える結果に胸躍った。何度も書くが、そのSWは中と外、完璧なマネージャーワーク、そしてコミュニケーション、最後審査が終わっても自分の仕事をきっちりと終わらせる責任感、全てが素晴らしかったので、勝ち進んできたのにも納得がいくし、これは優勝もあるのではないかなと期待感が膨らんだ。
審査中ではあったが、挙手してお呼びし、こう伝えた。
「野洲の開催で拝見しました!あなたは素晴らしい!必ず優勝できますよ!」
正直、シフトマネージメント部門は、多くの参戦者を見てきたが、アピールポイントがなかなか定まらないケースが多く、「巡回と点検」で終わってしまうパターンに陥りやすい。そんな中で、こちらの参戦者は、限られた時間の中で、マクドナルドの管理者があるべき姿を我々にもわかるように見せてくれるし、それは演じられたものではなかった。それはその所作を見ればわかる。

そのSWは審査が終わり、会場を後にする時、私の元にやってきて謝意を伝えてくれた。
私は色んな参戦者に出会うが、こうやって審査の後にひとこと言いにきてくれるクルーは内面に秘めたものを感じる。それは、審査後はツンとして、あー終わった終わったみたいなクルーには無い、人としての豊かさがある。感動を伝える、伝えられる事の素晴らしさを教えてくれる。

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今回はベストポジションで観戦

私の感じる今年のファイナルの印象は「基本的動作」だ。
今やファイナルあるあると化した「演出」とも受け取れる様々なワンフックが廃され、よりスマイルや基本的な動作に立ち返る、サービスの原点とも言うべき戦いだったように思う。今年は”GEL”(Guest ExperienceLeaer)という新しいタイトル(職制)もスタートし、よりサービス色を濃くしていこうという起源とも言える年となったが、割とSTAR(お客様係)に任せっきりだった「サービス」をもっと皆んなで考え直し、それを育てていくために磨きをかける。そういう取り組みの中で、AJCCの傾向としては、基本動作を洗練する流れになったように感じる。

以前から何度もこのブログで論じてきたが、勝ちにこだわりすぎて、雑技団のように色々なギミックを考え、持ち込みすぎていた中で、基本的なところで上質さが光るのは、私としてはとても嬉しいし、正統進化だと思う。
ことスマイルの仕上がりが凄い!ニューっとスマイルになるファイナリストは、おそらく全飲食業界でナンバーワンの癒しだろう。そしてどの接客ポジションにおいてもそれは結実している。

中でも気になったのが、OT(オーダーテイカー)の「筆談できます」という名札の下の表示。これは以前私がツイッターでもつぶやいていたが、航空会社のように名札に話せる他国語だったり、手話できるとかだったり、そういうバッジをしたらどうかという提言に合致する素晴らしいアプローチである。2020年、2025年に多くの外国人をお迎えする今、様々な人々が集うこの国のマクドナルドは、そういったフレンドリーサービスが求められる場所になるだろう。

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航空会社のようなスキルバッチは浸透するかもしれない

基本が大切だということ。
それを教えてくれるのは、指先まで張り巡らされた気持ちだろう。
OTが真っ直ぐに手を挙げてお客様の注意を引く。指先をそろえて手を組んでお辞儀をする、悩んだ時はメニューを指し示す、小さなお客様にバイバイしたりハイタッチしたり、手先が口ほどにものを言う。大きな声で、笑顔で、手を中心に「ボディランゲージ」を駆使することで、基本に徹しつつも、より美しく見えるものだ。
私の隣の席に外国人のグループ客が着席し、皆んなでナゲットを楽しそうに召し上がっていた。そこにフロアサービスのSTARがやってきて、「グーポーズ」(イイネのアイコンのような親指を立てたサイン)をしてきた。それに一瞬客もポカンとしたが、そのあとお互い見合い、グーポーズで笑いが生まれた。フロアサービスのSTARが朗らかな時間を生んだ瞬間だ。

そう。それらの所作とは「真心」が原動力なのだ。
人を喜ばせたい、笑顔にしたい、気持ちよくご利用頂きたいという、言われてやる義務的なものではなく、自分から想い、行動するという前向きさがそこにある。だから自然に手を動かしてしまうんだろう。

会場を訪れたクルーと合流して観戦し、ある話題になったが、それは「中からの声」だ。中とは、厨房の事を指す。
中ではひたすらにポテトを揚げたり、パティ(ハンバーグ)を焼いたり、ハンバーガーを組み立てるだけのクルーが働いている。彼らは、客からはとても見えにくいところで活躍している。
客から見えにくいということは、客が見えない。そうなってくると、人相手の仕事ではなく、モニターと、目の前の「物」との向かい合いで、自分との戦いになってくる。タイムとか、セールスとか、大量オーダーでだんだん悶々としてくる事だろう。
しかし、中から聞こえる「いらっしゃいませ!!」の声は、そんな空間で働きながらも、客の存在をイメージしている証だ。特にポテトパーソンは割と客に近いところに居るからこそ、ただただポテトを揚げるのではなく、威勢の良い発声で、中のムードアップをしてほしい。
ことポテトに関しては、マクドナルドの花形ポジションだけに、かっこよく働いてほしい。

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AJCCで輝くクルーはいつまでも見ていられる

審査も中盤にさしかかる頃、副社長が会場に現れた。
驚いたのは客には一切頭を下げない。偉そうにフロアを徘徊している。当然ながらファイナルの模様なんてどうでもいい様子だ。
現場主義を謳う彼は、床に落ちたポテトも拾わない。客のトレーも受け取らない。
最上級の質を競うクルーがすぐそこにいるのに、この温度差は何かな?と思わざるを得ない。
それこそ、満面の笑みで現場主義を語る記事などで露出してる訳だから、見る人が見れば誰だか分かるし、メディアの刷り込みとのギャップを感じたりするだろう。

クルーがやる事を、ネクタイを締めたものがやらなくていい事はない。いやむしろ、私の知るCEO、COOとは、いちばん客に近しい存在である。だからこそ、平社員よりも表では手先を動かさなければならない。
つまるところ、副社長の「客」とは、商品を買うお客様ではなく、食材を買い、ロイヤルティーを払うFCオーナーなんだなと思ってしまう。それは去年のAJCCファイナルでも感じたことだ。
フランチャイズ比率7割の今、分からなくもないが、客を見ていないというところは、そういうところからポロポロと見えるものだ。

エグゼクティブはバイトクルーよりも質が悪かった。
そんなことでは、また客が離れていくだろう。

しかし他方で、本社からやってきたメンバーは、大変な混雑の昼ピークにおいて、空下げ、床掃除、ラインメイクを率先して行い、以前とはだいぶ「印象」が変わったと感じた。以前はそういうことを全くしないで腕を組んでただ見ているだけだったが、審査を円滑に進めるべく黒子になりきり、協力してファイナルを成功させようという行動には感心した。

特筆すべき点として、今年のAJCCは色々な点が例年と異なったことがある。
会場となる店舗については前述の通りだが、会場内のゾーニングについても新しい取り組みが成され、営業中の店内で客と関係者が入り乱れたことへの対策か「関係者ゾーン」を整え、そこは一般客が入れないようになっていた。稼働できる席を確定数量で確保するという取り組みとして評価できると感じた。
そして一番の異例さは、情報の非公開化だろう。毎年AJCCファイナルには、多くの熱心なマクドナルドクルーが見学にやってくる。それは事前にも開催情報をWebSMILE(イントラネット)で得ることができるからだ。しかし、今年はその情報開示が無かったと聞く。この点においても、おそらくファイナルの開催自体をもっとブラックボックス化したいという思惑があるように思う。

しかし、これには疑問がある。
私はクルーに、もっとストアツアーをしてほしいと思っているし、ことAJCCファイナルについては、最高峰のサービス、技術が見られる訳だから、もっと視るべきだと思っている。もちろん私含めて、しっかり店内で飲食すれば普通に客だ。
飲食もせず、パソコン開いて大きく席を占有してきたビジネスの存在とはちょっと違う。現に見学に来ていたクルー達は飲食もしているし、可能な限り相席していたようだ。
自分達の仲間のチャンピオン戦を観たい!そう思うのは当然だろうし、そんなトップランナーに憧れる気持ちもわかる。それを規制してしまうと、せっかくのやる気とか、情熱が冷めてしまうし、何より継承されない。
そうなってくると、益々「AJCCとは何か」という疑問が大きくなってしまう。社外だけでなく、社内に対しても秘密主義になってしまったら、レイバーのことを突き放す事にはならないのだろうか?

全OTの上質な接客を受けたくて、サジェスト(おすすめ)を受けていたらこんな有様になってしまった。
やや寒い日だったので、ホットコーヒーだけでも相当飲むことになった!

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ファイナルに相応しい宴のあと

今日の審査結果は私はアウターなので知ることができない。
風の噂を待つ事にする。

帰宅して、あるクルーとやりとりしているなかで、自分が納得できる発言をしたので、それをここに書きたい。

AJCCとは、以前の記事にもあるように、ピュアなものではないのは知っている。
しかし、だからといって色眼鏡になってしまっては、悲しいものがある。
はっきり言っていきなり参戦して、いきなりチャンピオンになれるほど甘くはないし、もしかしたら今の仕事のやり方で間違いが多々見つかるかもしれない。
AJCCは毎年夏から秋にかけて審査されるが、取り組みが早い店ではもう2月頃からクルールームにコーナーを設け、店一丸となってムードを盛り上げる。

AJCCに参戦するということ、それは契り。

私はより一層マクドナルの仕事に磨きをかけ、成長するという決意表明なんだ。
それを高らかに宣誓し、皆んなに注目され、叱咤激励を浴び、ストアツアーして技を吸収したり、フィードバックをもらい、日々の業務を上質なものにした上で、参戦の日を迎える。
結果は後についてくる。そのマクドナルドとの指切りげんまん、契りを胸に一年間走り続ければ、結果はきっと出てくるし、自分は大きく成長しているはずだ。
だから、あなたも高らかに参戦を宣言してほしい!

AJCCは、技術コンクールという小さい存在ではない。
そこから得られる経験値こそ、長い人生を豊かに生きるための大きな実りだ。
また来年、ここで感動したい。

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