マクドナルドの理想郷である開成店

今年、AJCC(オールジャパンクルーコンテスト)を観戦するなかで、注目している事がある。それは、今年から新たな審査部門として開始した「GEL部門」について。GELとは「Guest Experience Leader」の略で、国内では「おもてなしリーダー」と呼ばれている。
このブログでも何度か採り上げている「サービスアップ」の施策として2017年に開始したそれだが、全国の様々な店で展開するのには、一斉にスタートするのは難しく、2019年が実質的な「GEL元年」となった。今やおもてなしリーダーが活躍する店はとても多くなった。

しかし、サービスアップを推進する反面で、顕在化する問題点もある。
それは、ビジネスリカバリープラン後の「大時化」(おおしけ)状態だ。忙しさを極める店は、多くの客が押し寄せ、おもてなしどころではなくなってしまった。そしてクルーからは笑顔が消え、ノイローゼになりバタバタと辞めていくという話をよく聞くようになった。

そんな実情の中で見るAJCCのGEL部門とはどんなものなのか。

過日開催された中日本地区本部戦。GEL部門の審査を見る中で、一際目立つ出場者を見つけた。私はそのGELが働く店をこの目で見たいと、ピピッと心動かされるものを感じたのだ。と、審査会場で食事をしていると、ある法人(フランチャイズ加盟企業)のオーナーが挨拶にやってきた。私は関係者ではないと告げると、私のことを知っているご様子で、しばし対談したのだが、私の想うところのマクドナルド像にピッタリで、後日同法人の店にTOV(臨店)したいと打診した。

神奈川県西、西湘地域で営業展開する同社。お招き頂いたのは開成店だ。
実は私はここが地元も地元。すぐ近所に母校もあり、駅を降りた瞬間に懐かしさを感じるところだ。駅から徒歩で10分ほどで同店に到着した。

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どことなく宮殿を思わせる外観

丹沢の山々、奥には富士山も見える。空気も東京からくらべると澄んでいるように感じる。
そんな山々に負けじと、大きなプレイランドがそびえ立つ同店は交差点に位置し、とても目立つ。聞くところに依ると、神奈川県でも屈指のセールスを誇るドライブスルーなのだそう。

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オーダー口はひとつしかないが神奈川屈指のハイセールスがここから生まれる

敷地は広く、中に台数は取り込みやすいのだが、サイドバイサイドではない。それでいて多くのマイカーでの来店に対応できるのには秘策があるのだろう。

【追記】
先の画像は朝の時間帯だが昼頃には爆裂的に混雑して驚いた!
もはや道と化している!

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三列の車列には圧倒された
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まるでグランドピアノのような形の店内

店はワンフロアで一般的な街道店のスタイル。建物の一角は一段屋根が高いプレイランドがある。内装デザインはだいたい10年ほど前のものだ。ただ、デジのトランスライトとかDPSは採用されており、スペック的に引けをとらない。

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なかなかデラックスなプレイランドはセパレートしている

 

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建物は古いが設備は更新されている

こちらをクリックすると開成店の店内をVRてでご覧いただけます

実は私はこの店を訪れる前に、今夏同法人の別の店にTOVしていた。そこで見たGELの仕事にも度肝を抜かされた(詳しくはフェイスブックをご覧いただきたい)こともあり、今回の注目事は、やはりGELのおもてなし力といったところだろう。そう。あのAJCCの日に注目していたのは、同法人の『メンズGEL』なのだ。

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イケメンなフロアホストTさん

マクドナルドクルーは圧倒的に女子が多い。だからAJCCにも女子が多く参戦してくる。それはそれで良しなのだが、やはり男子がやや元気がないというか、目立たないというか、群を抜かない。そんな中で、とびきり仕上がりの良いメンズGELを参戦させ、他店を圧倒させるその心意気に触れたく思った。

GELとは「フロアホスト」とも呼ばれる。ホスト感は絶対必要で、着のみ着のままではいけない。どこか上品で、丁寧で、落ち着いた佇まいが求められる。メンズGELのTさんのこの雰囲気、どうだろう。私は男から見てかっこいいと思える男が好きだ。メンズクルーとは、だらしなくラフにやることがかっこいいと思い込んでいる。しかし彼のように、真摯にひたむきに仕事をするその仕草は、きっと女性のハートを射抜くのではないだろうか。そう。同社のオーナーがフォーカスするのはそこだ。

ファミリーでの来客が多くなる街道店。ママ友や近くの学校の学生が多く訪れる。そんな中でキラキラしたメンズでおもてなししたいというオーナーの想いがここに結実している。都市部でもちらちらとメンズGELを見かけるが、時に「中学生」と見間違うほどユニフォームに着られ、そしてアップ感が無いのとは裏腹に、彼にはスタイルがある。やれと言われてするのではなく、一本筋が通っているからフロアサービスにもブレが無い。爽やかに、さりげなく、女性GELには無いものがある。こういうおもてなしの「咀嚼」もまた良いものだ。

実は開成店のTOV当日も、オーナーが駆けつけてくれて、ご夫婦から多くの話を聞くことができた。その中で感銘を受けたのが「ベルリンの壁」のお話だ。
東西ドイツを隔てる壁としてそびえ立っていた大きな塀。それがマクドナルドにもあるという。どこにあるのかというとそれは「カウンター」だというのだ。カウンターで分断された世界。クルーと客を隔てる見えない壁として、それを壊せないかずっと考えてきたという。そこにEOTF(未来型店舗体験)の波が押し寄せ、そこでするサービスを自分たちの手で活かしてみようということで、ある取り組みを始めたそうだ。

テーブルデリバリーというメソッドをしっかり育てていく試み。そしてその中で生まれた「テーブルデリバリーアンバサダー」の存在。これは年に何回か開催される社内コンクールにてしっかり審査され、認証された者にだけ特別な名札が与えられる。

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テーブルデリバリーの特別感は他店を寄せつけない

だからこそ、テーブルデリバリーの「質」が違う。
仏頂面で無愛想にされるものとは違い、最大限におもてなしの花が咲く、まさに花形に相応しいポジションへと昇華している。動画でそのクオリティをどうしてもお伝えしたくて、無理を押してお願いしての掲載だ。こんな上出来なテーブルデリバリーは見たことがない。そう。この取り組みにより、ベルリンの壁はブレークスルーしたのだ。

オーナーは熱く語る。
マクドナルドが失ったもの、そして私たちが忘れてはならないもの。
私が発信するSNS投稿をまるでバイブルのようだと褒めてくれるが、それはおそらく辛口な私の言論を変化の「ヒント」にしてくれているからだと思う。そういう「理念」とか「創造」を忘れるほど、今のマクドナルド を取り巻く環境は急激な変化の中で蹂躙され、大切なものを見失ってしまったから、EOTFさえも惰性でやる店が増えているのだと思う。今、レイバーは楽しく労働できているのだろうか。

そういう意味では、同店のクルーは違う。
それを語る上で、ある「行い」が気になった。

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管理者もバイトクルーも全員お辞儀を欠かさない

インしてくるクルーが従業員口を出入りするときに、必ずお辞儀をしているではないか。オーナー曰く、これは誰がしろと言ったわけでもなく、自然に始まったのだそう。まず店への、ゲストへの礼儀があるからこそ、仕事に特別な思いで取り組めるのだと思う。ある男性クルーはお辞儀の後に、拳を胸にあて、何かを念じているようだった。そういうことを目敏くしなくても見つけることができる。

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全員楽しそうに働いているのが印象的

以前、八戸南類家店でも同じ状態を見つけることができたが、この法人のクルーは労働を楽しんでいる。いや、労働だと思っていないのかもしれない。キッチン、ドライブスルー、カウンター、プレゼン、フロア、そしてシフトと、皆が嬉々としている。忙しければ忙しいほどにそれが色濃く感じられるかなり珍しいパターンだ。例えばテーブルデリバリーで往路。復路は席を整えてくる。それはもう言われてするのではなくて、自然と自分から行動することにどことなく悦びを見出しているのだろう。そういう空気は良い客を集めるのかもしれない。
そういえば店長がオペレーションなどには入らず、全体をしっかり把握し、指示や援護ができるように動いていたのが印象的だった。ディレクターはあまり自ら手を動かさずにディレクターに専念していた方が良い。

私が感動したのはまだある。
それはMSM活動が健在なところだ。

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手作りのイベントがまだあるなんて感激

オーナーと対談している席に、ニッコニコなクルーがやってきて、これからクリスマスの飾りを作りますけど参加しますか?と言ってきた。私とオーナーはいい歳した大人だし、参加する事は無いのだが、分け隔てなく声がけしてくれる心意気。イベントに参加するしないは別として、ハッピーのお裾分けとはなかなかではないか。同店ではこういうサンデーイベントの類が色褪せないで残っているのが嬉しい。子供たちの笑い声が聞こえなければマクドナルドではない。

実は初臨店の日は11月17日。この日に記事を書き上げて即時アップする予定だったのだが、思いの外オーナーとの談議に花が咲き、肝心な取材が疎かになってしまい、日が暮れてしまったため、今日改めての臨店となった。そういう意味では過日はオーナーがいるからこその「オーバースペック」なのかと思いつつ、今日またやってきたのだが、先日と遜色無い仕事っぷりに圧倒されたし、見せかけだけではない日々の積み重ねによって、この店、ピープルが育っているということを思い知らされた。今日もまるでBSVではないかと思えるほどにしっかりしている。

行き先が決まらないクルーズでは、クルーは不安だし、楽しくないし、海に飛び込み離脱したくなる。一方で、行き先が定まったクルーズなら楽しく、インナーのハッピーをゲストにもお裾分けできる。そう。今のマクドナルドが忘れかけている何かを、同法人のオーナー、社員、クルーは知っていて、そこに回帰していくことで、結局それが最善であると知っているのだ。意味がないテーゼなんていらない。やりたいこと、夢やビジョンがあって、皆が同じ方向を向き、タッグを組むからこそ、つまらなさそうにしている人はいない。ダイナミックに、ベーシックに、時にオーソドックスに。自分で拓く航路だからこそ、活き活きできる、そんなピープルに出逢うことができた。

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古いはずの設備が輝いている

最後に。
良い店は必ず洗面器が輝いている。
そして曇りひとつない窓ガラス。
多くを語る私ですが、原点はここにある。
惜しみなくTekina Awardを贈りたい。

※記事内のYouTubeは非公開限定リンクです

マクドナルドあすみが丘店で超EOTF体験

暑い暑い8月最初の週末。
出掛ける気力も無くてダラダラしていたけど、以前から気になっていた店をこの目で見たくて真夏の陽射しの中、千葉方面の電車に乗り込んだ。
目指したのは千葉県千葉市に所在する「あすみが丘店」だ。

実はこの店に注目していたのは、新店というだけではなく、様々な新機軸が盛り込まれているからだ。それについては少しずつ書いていく。
まず、この店は2019年6月末にG.Oした出来たてのホヤホヤ。そしてこの店を語る前に、近隣店である「大網街道土気店」の閉店について触れなければならない。

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同店が建て替えるのではなく、少し離れた新しい立地で生まれ変わった。オールドマックは最新の店舗として再びこの地にお目見えしたという訳である。また、今回はショッピングセンターの敷地に建築され、多くの家族連れが来店する、より賑やかな店となった。

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私はJR土気駅からタクシーで向かったが、かなり遠くから大きな看板が見えていて、クルマからも目にとまりやすい好立地という印象。大きな駐車場の一角に新築された建物はとても幅広く美しい。
“McCafe by Barista”の日本国内で100店目という記念すべき店舗で、高々とロゴサインが自己主張しているが、さっそくあるものを見つけた。

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McCafe by Baristaの商品は「店内でのみ提供」という看板だ。
ほれみたことか。以前からクロスセルでガタガタになってしまった展開については何度も苦言を呈してきたが、やはりこういう選択肢を選ぶようになるのだ。お寛ぎを早さでぶっ壊してしまった店をたくさん見てきただけに、ふふんと思ってしまった。

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外見のスクエアな感じからは予想できないゾーニングの店内は、色々と刺激があった。
オーダーカウンターは「なかもず店」「アエタ町田店」でも先行導入されているカフェブースとの並列型でシームレスな動線であり、とても働きやすそうだ。ちなみに、OTクルーが着用しているユニフォームは、新しいバリスタ用のユニフォームである。ネイビーを基調とし、イエローの差し色、サロンエプロンもなかなかかっこいい。そしてクルーの上質なOTに驚かされた。

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RANCILIOのイエローの筐体が目をひくバリスタブース。よく見て欲しいが店作りの小さな工夫もあるし、何よりカフェクルーがとても落ち着き、上品な微笑みの中で、おいしいコーヒーを淹れてくれる。かつてのドタバタはもうそこには無い。そして驚くなかれ、この小さなブースから、あのヒルズ、池上を超える売上をたたき出したというのだ。今まで効率と合理性ばかり追求してきた店よりも、こういった地味でもスタンダードなところに立ち返り、そして腰を据えた展開をすることで、売上がついてくるというロールモデルを築いた。それは今までの既成概念をぶっ壊した。ただ、この店の店長はとてもよく考えて行動している。それは後述する。

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フロアは食事を楽しむであろう席と、喫茶店のようにコーヒーを愉しむであろう席とゾーン分けしている。もちろんどう使っても自由だが、イスやテーブルのデザインにも変化があり、言葉無くとも自然とゾーニングが意識される。こういうスタイルは見たことがない。
バリスタについても、しっかりとテーブルデリバリーしてくれるのがうれしい。

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客席をパーティションで区切っているが、建物中央の大きくとった空間には「プレイランド」がある。
このデザインでプレイランドを持ってきたのはなかなか画期的だ。というのも、このブログでも再三唱えてきたとおり、マクドナルドは今、売上利益の追求に奔走しすぎた結果、子供たちの「いどころ」としてではなく、ひとつでも多くの客席をつくることに特化してきたように思う。それが引き金となって、STARがフロアから姿を消してしまった。つまり今のマクドの「無機質さ」をいちばん象徴する存在となってしまったのだが、同店のように「中央」に持ってきたというのは、きっと閉店した「大網街道土気店」のプレイランドを復活させたいという法人の想いではないだろうか。実際店内に滞在している時間は子供たちが楽しそうに過ごしているようだった。

ユニークさを感じたのはその隣のスペース。
パーティールームかな?と思ったら、こんな看板が…

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なんと「ミーティングルーム」という。
この発想はなかなかおもしろい。もちろんパーティールームとしても使えるし、何か地域の集まりでも利用できるし、子供向けの内装ではないから、会社員がランチミーティングなどでも使うことができるだろう。もちろん予約が無ければ開放して通常通りの客席としても使用できる。ちなみに同店ではクルーミーティングでも利用しているそうだ。

さて、ここからは店舗体験のことを書きたい。
そもそも今日は、同店の臨店は「お忍び」でそそくさと体験して、フェイスブックにまとめて終わりにする予定だった。しかし、店長が挨拶してくださり、しっかりコミュニケーションをとってくださった結果として、急遽ブログを書こうという思いに至った。私の中で良き店とは必ず店長が挨拶をしてくださる。失礼千万な物言いで、客を突き放すようなことをおめおめと発言する店長も多い中で、必ずこの店は「間違いない」と予感させるのは、優秀なRGMが店のコンダクターとなっているということだろう。

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少しボクシングの内藤選手に似たこのお方が店長。
そして素敵な笑みの女性がカフェマネージャー。素晴らしい仕事ぶりに思わずお誘いしてしまった。
日曜日の昼過ぎとはいえ、お忙しい最中に大いに意見交換させて頂いた。その中で強く感じたのは「脱マニュアル」というところだろうか。
ルール、マニュアル、テーゼは必要だけれども、それだけでは進化していかない。日本マクドナルドの創業者である藤田田氏の代から続く法人で、マクドナルドの古き良き時代を知るオーナーの元、管理者はバイトクルーたちに「気付き」を説いている。そう、私が今、EOTFを進めていく上で、いちばんの勘所というか、必要不可欠なものだと唱えているものをしっかりと見つめ、行動している。ここには書く事はできないが、数多くの「気付き」には「さすがです!」という言葉が自然と出てきてしまい、私は立ち話ながらもトリハダが立った。それは良い意味で感激したからこそ。

私のアンテナがピンと来たのは、お隣のカフェマネさんのスカーフだ。今年の秋に全国で一斉に変わるユニフォームが先行して導入されているのだが、カタログ通りの結び方ではなく、ふわっと美しい装いとなっている。「着るホスピタリティ」を体現している人はまず良い仕事をする。おもてなしのプロだなと思ったらまさにその通りだった。カフェマネが上品だと、バリスターもまたとても上質で、気品と気遣いが溢れる。この陳腐化してしまったマックカフェにおいて、豊かな気持ちにさせられる店舗体験は、相当久しぶりで、日々の積み重ね、気付きの研鑽こそがこういう感動を生むものなのだと感銘した。

そう、これを語らずにはいられない。
バリスタブースで発注したケーキセット。「席までお持ちします」というのに、テーブルテントを提供してこなかった。着席して待っていると間違いなく届いたので、思わず「どうして分かったのですか?」と聞いた。

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「お客様の特徴を覚えてご提供しているのです」
ほら来た。この一歩進んだテーブルデリバリー。去年のお盆に臨店した「八戸南類家店」と同じではないか。その感動が一年たった今、私のもとに再来したのだ。
システムは必要。しかしシステム頼りでは、気持ちが入らなくなっていく。そこに「客」という存在があり、客の特徴とか、状況を観察すること、そこからおもてなしが始まる。ことテーブルデリバリーについては色々思うところだが、こんなあったらいいが、まさに実現している。そして、そういうフィールドで働くからなのか、バイトクルーが一人残らずとても上質なのである。「今年はAJCCに参戦しているでしょう」と言ってしまうほどに、優秀な人財に恵まれている。いや、育っている。

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そういう点では、店に入るやずっと「おもてなしリーダー」の仕事っぷりには刮目してしまった。
ただフロアを廻っているだけではない。気付きとコミュニケーションの合わせ技。とてもよく客を見ている。私が臨店し、胡散臭くも店内をウロウロと観察していると、すぐに声をかけてくださり、席をご用意するという。スペシャルなユニフォームの輝きに負けない、おもてなしの深みを私は見つけた。気のせいかもしれないが、いつものクラブハウスサンドがよりおいしく感じた。

そう、私が言う「上辺だけのおもてなし」がマクドナルドの弱点。それは偏に「マニュアル」に頼りすぎたからこそ、残念が蔓延ってしまう。去年の青森での店舗体験、今日の店舗体験に共通しているのは、クルーが自主的に考えて、こうしたらいいという行動を起こしているということ。それをしっかり支える管理者の姿、EOTFとは、それを担う一人ひとりに委ねられている。だからこそ、自分が主人公なんだという強いポリシーが必要なのではなかろうか。

関東にお住まいの意識高いクルーには、ぜひストアツアーしてほしい店だ。
そしてTekina Awordを贈りたい。

■2019年8月5日追記■
土気駅から1.5kmほどある同店。道はわりと起伏が多く真夏に歩くにはしんどい。
経路探索では出てこないバスがあるようなので最寄りバス停の画像をアップしておく。

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マクドナルド糸満店は日本一!

7月。
沖縄は梅雨も明けて、季節はすっかり夏。
沖縄臨店の小旅行。私はレンタカーを走らせていた。

前回の記事で、新店を見学する目的とは別に、もうひとつの目的があった。
それは、二年前に訪問したことがある、ある店を訪ねたかったからだ。

思い起こせば二年前、ふと沖縄に旅立ちたくなったのは、全国のマクドナルドを廻る私が、SNSからひしひしと感じる秀逸な店、クルーの存在を、この目で確認したいと思ったからだった。そしてその時の「勘」はまったくブレなく的中し、今でも鮮明に覚えるほどの店舗体験を得る事ができたのである。そして今回もまた、同じ店を目指している。

実は、今回その店の「マネージャー」に会ってみたかった。
マクドナルド社内報「SMILE」に掲載されるほどに注目され、その記事を読んだが、またしても私の心の琴線に触れるものがあり、ぜひ対談してみたいと気持ちが動かされた。

目指した店は、マクドナルド糸満店だ。

沖縄本島の南西に位置し、海風を感じられるまさに南国地帯だ。
観光地という雰囲気というよりも、地元の風土、営みを強く感じる地域で、まるで故郷に帰ってきたような趣がある。

20190716aどことなくマイホームのような佇まい

店舗は通称「ひげマック」という、少し懐かしい雰囲気がある。店の正面には美しい花壇があり、色々と花が咲いている。大きな通りに面し、ドライブスルーはダブルレーンで、休日には行列ができるほどの人気がある。

20190716bこのあと近所の学生達で大変賑わった

店内は2階建てで、1階はキッチンとカウンター、壁を隔てて客席とプレイランドが併設されている。ユニークなのは、靴を脱いで広々とした空間で遊べるゾーンがあり、小さいデジタル遊具も備わっている。そのゾーンと客席がシームレスに繋がっているので、親御さんも子供たちに目を向けつつ、食事やお茶を愉しめる。

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20190716dお子様連れには大変喜ばれるゾーニング

そして、パーティールームもあり、個室で楽しいイベントも企画できる。私がとても気になるのは、インテリアのデザインだ。モノリスチックで金属やガラスが多用される現代の店舗建築とは異なり、アールが多用され、全体的にやわらかな印象がある。こういう空間なら心も和むこと間違いない。

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20190716fパーティースペースではお誕生日の想い出がたくさん生まれる

一方で2階席はシックな色合いでお寛ぎの空間といったところか。ファミレスのような四人席が中心で、家族の歓談が聞こえてくるようだ。大きなウィンドウから明るい光が差し込み、とても快適な空間である。

20190716g色使いがシックで落ち着いた店内

店に着くなり、熱烈な歓迎を受けた。私も有名になったものだ。
そしてお会いしたかったマネージャーと直接お会いできた。
なんといっても気さくでオープンな人柄に大変驚いた。初対面のような気がしなく、フレンドリーに接してくださる。もうこれだけで、多くを語らずとも、クルーとしてのスペックを窺い知ることができたが、色々と話を伺うこともできた。そして、そのマネージャーの優秀さは、予感ではなく確信へと変容した。詳しくはインスタに書いているので、読んでほしい。
そして臨店の記念に、手が空いたときを見計らい記念撮影をお願いしたら、快く引き受けてくださった。

20190716h撮影前にさりげなく花をあしらってくれた

ゲストを迎える人々の温かさ。都市型マック特有のバリアのような「見えない壁」が取り払われたオープンハート。そして店という箱の良さが、より素晴らしい店舗体験を演出してくれる。決して新しくは無いこの店で、なぜにここまで私の心を擽るのか。それは、作りものではない、心からの「おもてなし」がそこにあるからではないだろうか。それは沖縄という土地の、人々の内から滲み出る県民性だけではなく、みんなが集まるマクドナルドという場所を日々磨き、大切にしているからこそ、くすむ事なく輝きを放ち続けている。ルールを意識し過ぎて自分たちの首を締めるような、息苦しいものではなく、ゲストに喜んでもらいたいというピュアな想いがそこにあるからこそ、糸満店には魅力が溢れるのだろう。

さて、お伝えしたいことがもうひとつある。
私が東京に帰ってから、あるイベントを開催したと教えてくれた。

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20190716jチームがひとつになる特別な日だ

糸満店名物「ドライブスルーチャレンジデー」だ。
糸満店の存在を知ってから、いつもSNSでその敢闘の模様を知ることになったが、路面で大きなプラカードやフラッグを掲げ、多くのクルマを誘う。その様子を見ていつも思うのは、クルーがイヤイヤながら店のイベントに付き合っているという印象ではなく、みんなとても楽しそうにしている。セールス目的のターゲットデーは関東などでも見かけるが、早さや勢いだけが勝ってしまい、笑顔が消えたり、品質が悪かったり、いったいこれで誰が幸せになれるのか…と思ったりするが、糸満店のチャレンジデーはいつだって楽しそうだ。近隣に住んでいたなら、ぜひドライブスルーを利用したくなる。それでこそチャレンジデーの意義があるのではないだろうか。
今年も残念ながらレコード達成ならずだったそうだが、全員参加で「楽しく」挑戦するのは、負けたってきっと達成感があることだろう。

そしてこの日は、スナックの時間帯にあるイベントが開催された。
なんとフラダンスを店内で披露するというのだ!

20190716k多くのゲストが立ち見するほどのイベント

20190716lSTARやちびっ子もフラダンス♪

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こちらの方はGELなのだそう

先に説明した靴を脱いで遊べるスペースで、プロのフラダンサーが癒やしのダンスで、ゲストの心を魅了してくれた。奇しくも今、マクドナルドでは「超ハワイイ!!!」という南国テイストのサンドイッチを販売しているし、まさにタイムリーなイベントである。

企画したのは先に登場したマネージャーだ。まったく粋なことをやってくれる。
マクドナルドとは、このブログでも幾度となく唱えているが、“FUN PLACE TO GO” の心を失い、ひたすらに利潤の追求に特化されてしまった。直接利益を生まないものは削ぎ落とされ、サンデーイベント、マックアドベンチャー、バースデーパーティなどの企画をすべて廃止したという店もあるという。

イベントとは、お金儲けではない。店作りとは、直接利益を生まない。
いや、生まなくたっていい。商売のために何かを企画するだけでは寂しすぎる。人々が集まり、盆踊りのようにみんなが参加し、笑顔になってもらえること。それが本来のマクドナルドの姿では無かっただろうか。イベントをすることは素晴らしい。しかしもっと素晴らしいのは、ゲストを喜ばせたいという心なんだ。

私は糸満店を日本一のマクドナルドだと思っている。

そして忘れてはいけないのは、この愉快で、楽しくて、頼もしいメンバーだ。

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We Are McDonald’s!!

不器用でもいい。
ちょっとぐらいエアコンの効きが悪くたっていい。
レコードが達成できなくてもいい。
最高の“FUN PLACE TO GO”をありがとう。
マネージャー、そしてその仲間達に、私はただただ尊敬している。

レイクロックはマクドナルドはアメリカの新しい「教会」になると提唱した。
その心は今、この店に見て取る事ができる。
レイクロックもきっと天国から微笑んでくれていることだろう。

私は早速、Tekina Awardの栄えあるトロフィー第1号を贈ることを決めた。