直営だからできないなんてことはない

この記事は、まずタイトルの説明から始めたい。
今、日本のマクドナルドは直営比率が3割。フランチャイズが7割という状況にある。
それは、ここ数年で大きく流動した。そして、多くの店を訪れる私の個人的な感覚で言うと、直営店の「萎縮」(いしゅく)が気になっている。

萎縮とは何か。
一言で言うと、マクドナルドとしての肉付きが削ぎ落とされ、痩せ細った姿…とでも言うべきか。サービス、イベント、肉付き良くする「豊かさ」が削られ、ひたすらに「効率」「合理性」を優先し、それはまるでアスリートの肉体のように無駄が無い。そう、肉付きとは「無駄」なのかもしれないが、その無駄を削いだ姿とは、体温を感じる「人間臭さ」が無い。それは、「スマイル0円」を売りとしてきた同社のブランドイメージとは全く裏腹なものだ。

私は京都に降り立った。
そう。以前記事を書いた金閣寺店をもう一度訪ねたくて。

「直営店」という響きがパッとしなくなった昨今、金閣寺店を見ずして、それは語れないという思いだった。

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兵庫のマクドナルドを探訪して、駆け足で向かったが夜になってしまった。しかし、暗闇に光るクオリテのコントラストはまた美しい。
店に着くなり、MGRが扉を開けてまで歓迎してくれた。この歓迎ムードこそが金閣寺ならではだと思う。あたかも旅館に到着したような気分ではないか。
遅い時間に到着し、客足も疎らで、私は昼どきの慌ただしい時間の同店のポテンシャルを知りたいという好奇心から、急遽京都に宿をとり、翌日来店を決めた。

翌朝。
朝マックの時間を過ぎた頃来店。
店に入るなり、赤い服のSTARが歓迎してくれた。
朝食を食べそびれ、あぁ遅刻したなぁと思っていたところ、McCafe by Barista限定のメニューが目に飛び込んで来た。

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マフィン、グリドル、パンケーキというマクドナルドの朝食とは一風違うメニューを初めて知った!
そして、ここから赤い服を着たSTARのおもてなしの波状攻撃が始まった!それは嬉しい攻撃だ。

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私個人の好みでスムージーをチョイスしたのだが、本当はミルク感のあるホットメニューを勧めてくれていた。プロモに靡く私の心とは裏腹に、朝食を食べそびれた私の心を知っているSTARの姿。とても温かい心配りではないか。
そしてトレーをテーブルまで持ってきてくれた。

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もう良い予想を裏切らないトレーが届いた!
特にカップにあるウェルカムメッセージが嬉しい。スタバのような小洒落た感じの中に、どことなく直球のおもてなしメッセージにグッときた!これは良い一日の予感。

朝マックを食べそびれたということで、時計はもう11時。店もぼちぼち混み始めた。
直営店である金閣寺店。先に示したように、直営店の「セオリー」通りなら、これから始まる昼ピークは相当な修羅場を覚悟しなければならない。
さあさあどうなることやら…。

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長蛇の列ができ、店内は大変な賑わいが起こる中、STARが私の席にやってきて、ニッコリとサンプルを提供してくれた。これは嬉しいサービスだし、何よりこのスマイルを語らない訳にはいかない。このステキなスマイルは、サンプルを頂くよりも気持ちがアガるし、楽しさは倍増だ。
こちらのSTARは、とても「心配り」がある。ドアを開け、客に跪き目線を合わせ、自らホスピタリティの実践者として、顧客と向き合う。終始表情は柔らかく、作り笑いではないその佇まいは、世界一と言われる日本の、古都、京都のマクドナルドの代表に相応しい抜群な存在感だ。
混雑するレジ前をご案内し、席までトレーをお届けし、むずがる子供を宥め、汚れたテーブルを速やかに拭く。

そう、私はその細部を見逃さなかった。

店の床に小さい塵が落ちていても、それをすぐに片付ける観察眼。ご高齢の客の席で、話し相手になっている親しみやすさ、ソフトクリームを食べているお婆ちゃんに、さりげなくお皿とスプーンを提供するという粋な計い。それは嫌々ながらやっている義務的な仕事ではなく、心からおもてなしをし、自身も楽しく客と接するという思いが滲み出ている。

私は思わず、本人に聞いてしまった。
そのSTARの心は「自分がこうしてくれると嬉しいという気持ちに従っている」というのだ。それは、以前に書いた記事にあるように、「感じること」を優先し、マニュアルを超えたサービス、ホスピタリティを体現する姿があった。

そう、すっかり話が逸れてしまったが、忙しいい昼のピークタイムでさえ、ここまで安定し、揺るぎないホスピタリティの姿が、この店にはあるのだ。

直営店のMGRに聞いたことがある。それは「早くなければマクドではない」という言葉だ。
もちろん、私が今日ランチしたマクドのように、大行列が出来れば、いかに待たせずスピーディに商品を提供するか。それが最優先になるかもしれない。
しかし、それだけに全精力を集中するだけで良いのだろうか。

忙しいからおもてなしなんてできない。

本当にそうなのだろうか?
と、思えるほどに、金閣寺店には、直営店でありながら、それを打破するフォースがあるのではなかろうか。そういう気持ちにさせられる。

そう、理屈ではない。
大切なのは、個のパッションなのだ。

ゲストの来店を待ちわびるMGRの姿。
心ばかりのおもてなしができるSTAR。
立ち話でMGRの方と対話したが、私の知らないところまで拘り、そんな中で思いやりの心で支え合うMGRとSTARの姿、店先では到底気付けないクルー達の努力を感じることができた。

時に厳しい意見を客から頂くという。
涙が出るほど残念で、悔しくて、悔恨の念を抱くこともあるそうだ。
そこにあるのは、再び客を笑顔にしたいというパッション。それだけだ。
お世辞ではない。他の飲食店、接客業で出会えない、そんな素直で、清らかな心がそこにある。だからこそ、私はマクドナルドに夢中になれるのだ。

私は最後にあるお願いをした。

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それは、この心がこもったプラカップが捨てられなくて、持ち帰りたくなり、洗って欲しいという要望だ。

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私は新幹線で、京都にやってきて、この店を訪れた。
そう、この一見して無価値な使い捨てのプラスチックカップこそが、心のこもった贈り物なんだ。だからこそ、東京にお土産にしたい、大切なものに感じた。
綺麗にしてくれて、これはもう私の思い出の1ページとなった。

3割の直営店。
それは今、余裕が無い、ホスピタリティが発揮できない、STARがSTARらしく活躍できない、そんな存在であると思う。
しかし、こうして何の問題も無く出来る店がある。
もちろん、それを支える人に恵まれているとか、理解者ありきの好環境だと言うかもしれない。しかし、つまるところ、それを実現できるのは情熱であり、個人の志が大きいのではないだろうか。それは誰にも侵されない。

帰りの新幹線。
翌日の仕事の最中。
そしてこの記事を書いている今。
それだけ長く余韻に浸れるマクドナルドのピープルの素晴らしさ。
それは、忙しさや、トップダウンで潰されることなく、麦のように踏んでも負けずにまっすぐ伸びる。そんな強くて、しなやかな存在であってほしいと切に願う。

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そのSTARにも話しを聞いた。
彼女は、ホスピタリティを極めたいという。
私はその心意気に熱いエールを贈りたい。
そして、再び会えることが楽しみだ。

まさにクルーエクセレンス!

マクドナルドを超えるマクドナルド

世の中には二つの種類のマクドナルドがあるという事をご存じだろうか。
一つは直営店。日本マクドナルドホールディングスが運営している店舗。
そしてもう一つは前者のそれではなく、フランチャイズで「のれん分け」してもらった別会社が経営している店舗。
そして一見しても、どっちがどっちかは分からない。

しかし、私ほどマクドナルドに行く者には「違い」が判ったりする。
その違いとは一体どこにあるとお思いだろうか。

過日早朝、私は八王子のある駅にいた。
その日は、あるフランチャイジー(以下 FC)の展開する店舗「だけ」を廻ってみたいと思っていた。
そのFCとは、「株式会社豊昇」(以下 豊昇)という企業だ。
東京、埼玉、群馬で66店舗を運営している、大きなFCである。
私は以前からこの企業に着目していた。
基本、FCとは、あくまで本社・直営店舗に「古轍」の精神で沿った事をする。
それはあくまで「原則」であり、それ自体は正しい事である。
しかし、豊昇の店舗では、直営店の一歩進んだ取り組みをしている。それは、サービスであったり、店作りであったり、実に多様である。
それをしっかり見分してみたかったのだ。

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到着した高尾の店舗では、クルーが温かく迎えてくれた。
いや、更なる驚きは店長が客席で私(客)と直接コミュニケーションをとってくれたことだ。
この店舗には以前訪問していたが、その時にこんな取り組みをしていた。

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高齢の客に対してコーヒーをおかわりを無料で提供しようというものだ。
これは豊昇オリジナルのサービス。
店長自ら客席を廻って、来店された高齢の客に一人ひとり説明し、とても和やかなムードになっていた。
店長のコミュニケーションはとても柔和で、正直直営ではあまり出会わない感じの人柄を感じた。
接遇もとても丁寧だし、手薄で慌ただしい時間も決して粗雑な接客になることが無い。
驚いたのは、その手薄なときでも、頼んだわけではないのに、わざわざ別室に走って行き、名刺を持ってきてくれたことだ。
直営は名刺も渡さない、名札もしない、そういう店長が結構多い。
小さいことだが、ここでも違いを実感する。

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その後も続けて豊昇の展開する店舗を廻った。
そしてどの店にも共通している事が視えた。
それは、客人に対する「おもてなし」の一歩前に出た工夫だ。
たとえば、どの店にも、このようなものがあった。

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よくバッグを床に直に置かないように「バッグ入れ」のようなカゴがあったりする。
それについては、直営店でもやっている。
しかし豊昇では、それに加えて「膝掛け」を完備しているのだ。
「あったらいいな」を形にする心。そういう一つのアイデアを形にする意思決定であったり、それを採用する柔軟性は、FC、豊昇側に軍配が上がるだろう。
店内においても、その違いをひしひしと感じる。

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こういったコーナーはだいたいSTARと呼ばれる職制のクルーの仕事だ。
率先して店を「手作り」するのがSTARチームと呼ばれる、STARのグループが行う。
しかし、この行動についても、直営とFCで取扱が違ったりする。
多くのクルーと対話してきたが、直営店は店作りに対して「否定的」なパターンが多いようだ。
上からのお達しというか、ブランドイメージの固持なのか、或いは本国のVIPの指摘か、店の装飾を由としない風潮がある。事実現在も一切禁止している店もあると聞く。
店として客をもてなすアプローチとしては、こういった我が家のような「ムード作り」がとても大切だと私は思っているし、それを店として推進しているのは、大いに評価できる。
細やかな心配りは、地元を大事にしている証拠だ。

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豊昇の凄さを実感することになったのは、最後に訪れた店舗での出来事。
正直、この店にはAJCC(オールジャパンクルーコンテスト)の高名クルーの実力をこの目で見たくてやってきた。
もちろん、その仕事を目の当たりにでき、大いに満足した。
しかし、偶然にも、もう一つの発見があった。
それこそAJCCでもないのに、店内に審査員らしき人物がいたので、私は思わず話しかけてしまった。
するとその方は、サービス専門のインストラクターだというのだ。
一見して完成していると思われるフロアサービスをもう一度見直して、客の目線に立ったサービスの「質」にこだわったクルーの教育をしているという。
実際、その様子を見学したが、とても目の付け所が素晴らしかった。
ここには書かないが、クルーとして当たり前のことでも、客からしてみると迷惑だと思うこと、そこをしっかり押さえている。
何だろう、「マニュアル通りの事をサービスとは言わない」というような本質的なサービスを育んでいた。
先の記事で「ゲル」(Guest Experience Leader)という新しい職制について書いたが、フロアサービスの質を高めるという本社の方向性と、FCの考える方向性こそ一致しているのだが、たいていのFCは本社からやれと言われたことしかやらない。
しかしここまで、踏み込んで、自主的に改善していこうという活動が実際に行われているのは、初めて知ることとなった。

そして特筆すべきはSNSへの反響がある。
私が逐次ツイートしていく中で、それに豊昇公式ツイッターが反響をしてくれる。
ついでに語ると、豊昇はFCでもSNS展開がとても優れている。
自社で起こしたツイッターも流行っており、内輪のフォロワーだけではなく、顧客からの支持も厚い。
SNSはYouTubeなどを組みあわせた展開をしており、SEO的にスコアはかなり高い。

採用については、専用サイト、動画でのプレゼンテーション、立派な会社案内まで用意してあり、FCとは思えない実力派だ。

こと雇用のワークライフバランスにおいては、不安を解決するソリューションがあり、ただ大味に「採用」という言葉を振りかざすのではなく、働く人を「想う」姿勢がある。
それこそが、クルー満足度に繋がり、顧客満足を高める様々な「答え」を出せる環境作りに繋がっていると思う。

クーポンについても、公式に頼りすぎず、豊昇店舗で利用できるクーポンを独自展開している。
このハッピーセットの「大人用」はニーズを掴んでいるし、もはや公式を超えている。

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今FC、豊昇には、私の求めるマクドナルド像がある。

なぜ直営にできないことをFCができるのか。
他にも、過去に起きた川崎某店での出来事のように陰でSNS上で客の悪口を言い合ったり、店長が気まぐれで客を出入り禁止にしたりというような事がない(共に直営店)。
そして何よりSNSを警戒して、おっかなびっくりする事もなく堂々としたものだ。
それらの根幹にあるのは、建前だけの「いらっしゃいませ」ではなく、本心からそう思える姿だと思うのだ。

本来、マクドナルドの創業者精神の一つであり、経営的にいちばんの骨格とも言える「フランチャイジーとフランチャイザー」の関係。
直営比率が下がった今、直営自体の存在意義が問われはじめていると思う。
豊昇の成長の裏には、皮肉なことに「直営のFC化」の受け皿としての側面がある。しかし、柔軟性を失った直営が再び水を得た魚のように活き活きとし、自由闊達に店舗運営ができるようになったという側面もある。

正直、10年も前は、FCの質がむしろ悪かった。
従業員の身だしなみ(アピアランス)も、直営はきちんとしていて、FCはだらしないという時期があった。
店に入るとすぐどっちの経営か判ったものだ。
しかし今、それが逆転している。
忌憚ない意見を言えば、もはやガッカリは直営に多く見られるようになった。
大事なのは、直営だのFCだのという柵抜きで、公平に安定的な品質を維持できる、本心から客を歓迎する姿になることなのだが…。

直営は今、FCに負けている。
大きなマクドナルドは、小さなマクドナルド(失礼)に超えられた。
豊昇のパッションとは、相当なものなのだ。

これからも同社の“EMOTION”を、見届けていきたい。

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