マクドナルドのおもてなし方

YTサジェストしてきた韓国マクドナルドの動画を観ていたら、韓国ではまだクオーターパウンダーが発売されていることを知った。

日本でもクオーターパウンダーは販売されていたが、社長交代でサラカサノバ氏が就任して、お決まりの「デキる社長の演出」として商品刷新を企てられ、クオーターパウンダーと4:1(ハンバーグの規格)が廃止されて、より量産に特化した6:1が誕生し、それを利用した料理として「グラン」シリーズが誕生し、その後事実上のクオーターパウンダーの後継として「サムライマック」が誕生した。

公式サイトにもQuater Pounderがラインナップされている

まあ、はっきり言って私個人的には「サムライマック」はあまり好きではない。その理由としてはやはり4:1だけが醸し出せる無骨でパンチの効いたアメリカンなハンバーガーではなく、こぢんまりとしたコモディティバーガーと成り下がったからだ。サムライマックに採用された6:1は一度に焼ける量が多い分コンパクトになっている。当然バーガーのサイズ感、ボリュームが縮小されるから、グラムではそこまで大差は無いものの、明らかにインパクトに欠ける。そしてとにかく「パン」が不味い。もう「普通」ではなく「不味い」と断言する。ぜひ皆さんもサムライマックを食べる際、パンだけ食べてみて欲しい。水気が無くてパッサパサ。風味も歯ごたえも無い。パン単体で食べられないものはパテと組み合わせたところでおいしくはならない。例えれば寿司のようなものだ。ネタが新鮮だったとしても、シャリが不味ければ全てが台無しになる。サムライマックはマクドナルドの魂とも言えるクオーターパウンダーを廃止してまで誕生させる意味が無かったように感じる。また会社としては、6:1を採用したことを必死に「正当化」したいだけなのだろう。それは分かるが、パテにお金をかけすぎたからパンは屑パンにでもなってしまったのだろうか。このパンを採用した本社開発部門の感性を疑ってしまう。

まあ、それはさておき、同じく韓国マクドナルドのYT動画を観ていると、SNSタッチのこんな動画がサジェストされた。

どうやら韓国アイドルユニットの「shinee」のメンバーkey氏がビジットし、クルー体験をするという内容のようだ。私は詳しいことがわからないので、もし間違えていたらご指摘願いたい。

この動画を観て、まず思うことがある。
それは、公式が製作した動画のようだが、日本のように映画の機材を用いて、俳優に台本通りのことを言わせるそれではなく、key氏の言葉で、自然な振る舞いでクルーになって客に接しているところだ。この動画の目的はクオーターパウンダーの新作のプロモーションなのか、ハイアリングなのかはわからない。しかし、一から十まですべて台本通り、演技指導されて何テイクも撮り直すのではなく、タレントである以前に「人」であること。そしてkey氏の人々とのコミュニケーションがとても自然で、視聴しているこの私の中で、日本のマクドナルドから消えたものを彷彿とさせるものがあった。

このブログでも過去に記事を書いているが、日本マクドナルドは“EOTF”(Experience of the future)ということで、2017年頃から「未来型店舗体験」というものを打ち出している。知っている人は知っている…かもしれないが、その取り組みは案外顧客には浸透していない。

その中でも、私が最も期待して、そして残念運用のままになっているのは「おもてなしリーダー」の存在。今年は2025年だからサービスインしてかれこれ八年の歳月が流れているというのに、いまだに「知らない」という声も聞く。それは偏に、おもてなしリーダーを「やったりやらなかったり運用が疎ら」だからだと思っている。

元々日本のマクドナルドには、STARというタイトルがあって、客側のホスピタリティの部分と、調理や提供のオペレーションの部分を両立した人員を配置し安定的に運用してきた。しかし先に触れた「クオーターパウンダー廃止」と時を同じくしてSTARは廃止された。会社は高らかに「おもてなしリーダー」始めます!と宣言はしたものの、古くからSTARを育ててきた全国の法人のオーナーから、STARというタイトルに愛着があった者からも様々な不満が噴出。そうこうしていたらコロナ特需で会社は「あぶく銭」を手にしてしまい、せっかく開始したおもてなしリーダーは忙しさの中に蹂躙され、一気に存在感を失った。

着るホスピタリティとしては合格のGEL

STARとGEL(おもてなしリーダー)の唯一であり大きな違いは、「店にいる時間」だろう。STARはどの店でもたいてい数名、一日中誰かしら店にいたものだが、GELに至っては、時間を限定しての運用が多く、午前11時から午後2時の昼ピークと呼ばれる時間帯にしか運用されていないケースがほとんどで、特に問題としているのは「無運用」という店もそれなりにあるという事だ。忙しさと人手不足にかこつけてポジショニングをしていない。だから当然そういう店の客はGELの存在を知らない。

このGELというタイトルの運用には、「不活性」になる致命的な問題点があると私は思っている。なんというか、「おもてなしの聖域化」がそこにあるような気がするのだ。STARの時代には「息をするように」ホスピタリティを高める行動があったというのに、先に触れたように「時間限定」であったり、GELについても「特殊」なタイトルのような扱いによって、それは孤高になり、なにかこう「おもてなし」とは違う何かになってしまったように思う。

ここでいくつかの「おもてなしリーダー事例」を挙げてみたい。
神奈川県のとある店では、大手外食チェーン店で接客に関する表彰経験者がやってきて、GELの認証にチャレンジした。本人はやはり前職での受賞経験があるので「プライド」は高く半年ほどでGELになった。私は店に行ってその働きを見ていたが、何かがおかしいことがとても気になった。ファミリーで食事している席に行き、跪いて何やらアンケートをお願いしている。楽しい食事のひとときに割り込んでアンケートのお願いははたしてどうなのかな…と思っていたが、問題はその跪いて必死に話している間、通路が狭くなり歩きづらくなっていた。それに本人は気付かず自信満々にトークしている。なんというかこうプライドが一人歩きしている。客はその「おもてなし」に向きを変えなければならない。そういう圧迫感というのは、「主観的」な人に多く見られる傾向のように思う。
大阪府の店では、STAR時代を思わせる「まっすぐ」なおもてなしに感激した。大阪の中心地でとても混む店だったが、とにかく座れる場所を客と一緒に見つける。用意する。その動作がとてもキビキビしていて頼もしい。赤ちゃんを連れてきたらハイチェアを用意して、抱っこしたりして親御さんもとても喜んでいるようだ。先の神奈川県のGELと違うところは、とにかく「親しみが持てる」ところにある。特別なタイトルでユニフォームに着られるのではなく、明るく健気に活躍する「御用聞き」という印象だった。

ここで冒頭に触れた「key氏」について話を戻しつつ書き進めたい。序盤の動画の中で、key氏の客席での活躍が収録されているが、私にはこの働きこそが「GELのあるべき姿」のような気がしている。そもそも日本では「おもてなし」をするぞと旗揚げこそしたものの、その教育メソッドはあまりにも酷かった。航空会社のようなおもてなしのプロを求めていながら、トレーニングセンターで集合教育をするでもない、教本があるでもなく、ある意味「我流」が横行した。中には元CAというような「キワモノ」まで登場するが、はたしてハンバーガー屋で何が出来るのかだ。そして我流になるとそれぞれに努力してたくさんの本を読んだりして勉強する人もいる。マクドナルド関係者お得意の「ストアツアー」(マクドナルドの他店をお忍びで見学に行くこと)をしたりする。しかし、それらを繰り返していくうちに、おもてなしはどんどん「孤高」で「頭でっかち」になっていく。立ち振る舞いやお辞儀などの所作は磨かれるかもしれないが、肝心なおもてなしにはおそらく最適解が見つかっていない。

会社では年に一度行う技術コンクール(AJCC)によって、優秀な人材への褒賞を行う。もちろん優れた人が選ばれるし、私も機会があれば、その会場にて仕事っぷりを観戦させて頂くことはあるが、とても重要なことがあって、この技術コンクールで表彰される人はどのポジションも必ず「会社の方針に近いか」が評価される。なら良いじゃないかと思うかも知れないが、いやいやそんなことはないのだ。会社の想いの根幹にあるのは「合理性」であって、特におもてなしに類する「非生産性」においては、今は全く重視していない。それが今のマクドナルドの体験を構成しているからこそ、私は今最もマクドナルドを利用しなくなったのだ。

key氏の働く姿、動画を観てくれただろうか。彼はまるで店の客を「友達」や「家族」と話すように接している。おっかなびっくり仰々しさは無く、軽めのトークに笑顔になって、それぞれにアドリブの効いたコミュニケーションが溢れる。それは前述の大阪府で出会ったGELを思い出させるものがある。私が外食をする時も、オールセルフで対話が無い店よりも、ちょっとお喋りできて、なんなら気軽に感想を伝えたりできる、そんな店がうれしい。仕事でモニターを凝視する生活だからこそ、食事の時ぐらいモニターは見ずに、人とのやわらかい時間を過ごしたいと思っていたりもするからかもしれない。key氏のように接してくれたら私は嬉しい。そう。家族や友達に対して「対応」はしない。「対応」というのは対して応じる事を意識してすることだ。家族や友達との対話を「意識」する人はいない。我が家にやってきた友人をもてなすようにするだけ。もしかしたら、それがマクドナルド流のおもてなしなのかもしれない。それを彼が教えてくれた。

素晴らしいGELからはお誘いも多く頂く

多くのGELから訊かれる言葉は意外にも「おもてなしは何をしたらいいか」だったりする。写真のGELのようにおもてなしを専門的に学び、その世界に進む人もいるが、学生や主婦にはいまいちわからないことが多いようだ。そして会社の圧政の中で、求められたり捨てられたりする扱いで、イヤイヤ期に入ったGELも多く知っている。私からひとつだけ言える事は、「店とは家」ということだろうか。キャビンアテンダントでもホテルマンでもない、ガヤガヤして子供たちが走り回り、そんな賑やかな場所とはきっと「家」なんだと思う。親戚家族がやってきたら、ここに座ってと言い、お茶を用意してお喋りをする。バイバイしてもまた来てくれれば喜んで迎え入れる。そして訝しげに顔をしかめるのではなくて、ニコニコしていればおもてなしになるのではないだろうか。リーダーである必要はない。そう。おもてなしマスター(極める)でありたい。

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