STARについて考える

新しいユニフォームへの関心が高まっている今、考えていることがある。それは「STAR」の立場についてだ。
そもそもその「STAR」とは何かについて説明するところから始めよう。

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今のマクドナルドユニフォームはこのデザインだが、中でも赤いシャツを着用しているのが、「STAR」(スター)と呼ばれるタイトル(職制)である。STARと言っても「星」を意味しているのではなく、”Store Activities Representative”を略したもので、訳して「店舗活動代表者」というような位置づけであり、また「お客様係」という日本語での呼称も存在する。
このSTARとは、他のクルーと何が違うのか。実はここがいちばん重要であり、論点でもある。
元々マクドナルドとは、ファーストフードで、アメリカ発のビジネスモデルを「輸入」したものだ。そこに、日本法人が独自のサービスメソッドとして、客席のお世話担当のSTARという係を独自に考案し、ジャパンオリジナルとして採用したのが発端だ。つまり、日本以外の国で、STARというタイトルは存在しない(似たようなタイトルはある)。

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通称「ピンクベスト」と呼ばれたスタユニ

“STP”という特別な教育を受けたSTARは、スターのユニフォームとして、通称「スタユニ」と呼ばれる特別なユニフォームの着用が認められる存在だ。そしてそれはいつの時代もバイトをする女子たちの憧れでもあり、不動の人気を誇った。
日本にマクドナルドが上陸して50年。今までいくつもの「スタユニ」が誕生してきた。きっと皆の記憶にも残っていることだろう。

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通称「ジャンスカ」と呼ばれたスタユニ

そして記憶に新しい「バーガーストライプ」のこのスタユニは最も人気が高く、今でも復活してほしいとまで言われている。今では考えられないが、種類も選べたり、専用のサロンエプロンが付いていたり、力が入っているのがわかる。

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そして2013年、今の「赤シャツ」で構成されるスタユニに切り替わり、今に至っている。
時代とともに変化していくトレンドに合わせているのか、どんどんユニセックス化し、ピース数も減り、簡素なものに変貌している。噂では、2018年内に、前回のこの記事に書いた「新デザインユニフォーム」への衣替えがあるという。その記事の中で少し触れたが、スタユニはおろかSTAR自体がもしかしたら無くなるのではないかという憶測が飛び交っている。

と、そこで「なぜSTARが無くなるのか?」の根拠について説明していきたい。
まず、こちらの画像を見てほしい。

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典型的過去のフォーメーション

これは今から5年ほど前に一般的だった店のポジションとタイトルのマトリクスだ。
見ての通り、STARは確実にフロアサービス(客席担当)として配置され、特に土日の混雑する時間は間違いなくそのポジションで、いかんなく「お客様係」としての存在感を発揮していた。
しかし、ユニフォームが今のものに変わる頃、経営者も変わり、そのフォーメーションは大きく変化していった。

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典型的現在のフォーメーション

スタユニは変わり、今の「赤シャツ」に変わった。そして、一目瞭然なのだが、フロアサービスというポジションがかなり縮小し、もはや止めてしまった店も多い。STARとは、昔から「フロアサービス」をすることが仕事、と言っても過言では無いほどに、客席の管理、おもてなしを任せられていた。だからこその特別なユニフォームという訳である。
しかし今、業務拡大、未曾有の人手不足やインカム量の増大に伴い、客席にSTARを出すだけの余裕が無くなってしまっている。そして、どちらかというと「外側」ではなく「内側」にポジショニングされるようになってしまった。
STARは「トレーナー」という立場である事が、なるための条件だった。それが現在では文字通り「教える者」としての色が濃くなり、またそれだけのハイスキルを持っているからこそ、「重要なポスト」として、取り揃えて渡すというサービスアンカー的な役割を果たしていく事になっていった。つまり、STARとしてのスキルが良いように扱われ、本来の持ち場であったフロアサービスから離されてしまったのだ。会社としてフロアサービスを止めたわけではないし、全国的に見てもSTARがフロアサービスをしている店はある。しかし、どこでも見ることができたフロアサービスはかなり「希少」な存在になってしまった。

そこに拍車を掛ける出来事が起こる。
それは「GEL」の登場だ。”Guest Experience Leader”を略して、通称「ゲル」という新しいタイトルが登場し、半世紀に亘るマクドナルドの歴史に新しい要素が加えられた。求人募集広告を見ても、「おもてなしリーダー」という強い刷り込みがあり、その専門職の参入には、ある疑問が生じる。

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経営の合理性からSTARSTARでなくなり、新しいタイトルであるGELを配置するのは、長きに亘って培ってきたSTARとしての経験、伝統、文化をすべて壊していく事にはならないのだろうかという点だ。
もちろん、サービスを、おもてなしを高めていくという考えはとても素晴らしい。しかし、STARとしての強いこだわりを持ち、ホスピタリティを学び、客といちばん近い場所で活躍してきたSTARにとっては、誰にも譲れないプライドがあるのだと思う。本当はフロアサービスをしたい。でも事情を鑑み仕方なく内の事をやる。しかしそうやってSTARである事を押し殺してまで頑張ったというのに、気が付けば他のタイトルにその座を奪われようとは。
私がもしSTARだったなら、筆舌に尽くしがたい思いだ。

今、現場はどうだろうか。
フロアサービスが見られなくなった店では、一般職であるCREW(青い服を着た従業員)が客席を廻り、テーブルを拭き、ゴミ替えし、ひと周りしたら内に戻っていく。当然STPという教育を受けていないから、STARと同等ではない。
フロアサービスが無くても、店は回る。客は食事をして、帰って行く。
しかし、そこにはかつてあったはずの「対話」が無い。安心して利用できる「心配り」が無い。
ユニフォームとともに失ったもの。それはきっと「パッション」なんだと思う。

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STARの情熱が無くなったと言っているのではない。きっと簡素なスタユニによって、お客様係としての特別な存在では無くなり、単なる「ハイスキルクルー」になってしまい、STARとしての活躍の場、そしてそれを見て感じる憧れなどの「パッション」を失ったのだろう。
いや、現場は今疲弊して、もしかしたら、フロアサービスどころではないのかもしれない。

私の想いを最後に書きたい。
STARに、再びフロアサービスをしてほしい。
私の長いマクドナルドの想い出の中で、光り輝き、今でも昨日のように想い出される場面には、いつだってSTARがいる。そのSTARがいなくなったからこそ、私はとても残念に思っていた。ピックアップエリアでSTARとしてのポテンシャルを発揮しているのをも見ても、どことなくやるせない思いがあった。

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STARはフロアサービス、MSMなどの店舗活動、マクドナルドのお姉さんとして、光り輝き、皆の人気者であり、憧れの的であってほしい。

ホスピタリティを誰よりも育ててきたSTARを、私は知っているから。

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