2018年10月7日 AJCC会場にて

今年からAJCCの記事はフェイスブックに展開している。
理由については過去の記事を読んでほしい。
何回か会場で食事しながら審査を拝見しているが、今年は今年で色々と発見もある。
興味がある方はフェイスブックを見て頂きたい。

今回やってきたのは「8号線野洲店」
実はこの店舗、昨年も訪れている。その時の記事はこちら
ミニブロック戦というのも去年と全く同じ。今年はどんな戦いが見られるのだろうか。

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二度目の訪問なので見覚えのある外観。早速中にはいると、今いちばん新しいインテリアにリニューアルされており、大変驚いた。

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箱の新しさは、今全国でリモデルしているので、それほど新鮮さは無い。どちらかというと、その箱を活かす「人」に注目している。だからこそ、神奈川県から遠路遥々滋賀県まで来て、それもマクドナルドに向かうのだ。
私の友人にその話をすると、みんな一様に爆笑する。マクドなんて近所にあるだろうにと。そこで私はこう話す。
「マクドナルドはどれも同じに見えるけど、人やサービスは結構違うよ」
それを聞くと、またまた爆笑が返ってくる。
「んなことはない!」
とまで言われる。それはつまり、マクドナルドの接遇の良さを感じていないという事の暗喩でもある。それだけ世の中、特に関東では、その程度の店舗体験が蔓延っているという事を意味していると思う。つまり「マクドナルドなんてそのレベルだよ」ということを言いたいのだろう。

前回の記事でAJCCの存在意義に異論を唱えてから、この記事を書くのは筋違いと思われるかもしれないが、そこは少しニュアンスが違うので補足する。

40年以上も毎年行われてきたこの社内イベント。本来AJCCとは、「技術の向上とモチベーションを高める」というピュアな目的があってこそのコンクールだったが、年々その内容は変化し、今となっては、先の記事が示す通りで、「技術の向上」よりも「勝ち」にこだわったものになってしまった。
それは「審査の傾向と質」がそうさせていると思っている。AJCC自体によりより盛大なドラマを練りこむようになり、コンクールではなく「24時間テレビ」のように慣例化し、感動させるギミックがあり、そこに勝ちたい一心でしかないクルーが集まる。その戦いで日本一になるという目的は素晴らしいが、かなり「背伸び」しないと勝てないものに成り代わってしまったのだ。
考えてみれば、今や「海外研修旅行」などのご褒美も廃止され、チャンピオンだけに着用が認められるスペシャルなユニフォームも廃止され、それではもう「日本一の称号」だけしか頂けるものが無い。だから仕方のない事かもしれないが。
そんな中でも、本質を理解し、真摯に努力しているクルーの姿、仕事への工夫とか、客の笑顔を引き出す素晴らしい接遇もまた多く見つけられる場所がAJCCだ。「マクドナルド的な〇〇」として活動する私の信条は「良いものを見つけて拡げる」という事だからこそ、その現場の息吹を感じたいというところなのだ。

審査そのものは、色々と「イイネ」が 見つかった。それはフェイスブックにまとめるので仕事の質を高めたいクルーは参考にしてほしい。

今回は少し違う切り口の事をテーマとして書き進めたい。

会場店舗のスウィングマネージャー(SW)は大変素晴らしい女性クルーだ。
何が素晴らしいかと言えば、ほぼ非のつけどころが無い完璧な仕事、漲る自信、豊かな表情、心配りというところか。そもそも、AJCCの会場店舗には地域の選りすぐりの参戦者が集う訳で、店としてもいちばん優秀なクルーを当日店に立たせるという事情もあるのだろう。

しかし、店内である事が気になった。

カウンターの隅で、そのSWがトレーの拭きあげをしていた。するとそこへネクタイの叔父様がやってきて注意している。聞き耳を立てるとこういう話だ。
「トレーをカウンターに積むな」
OT1、OT2で賄えるだけのインカムなので、OT3にトレーを置いても問題無いのでは?と思っていたし、カウンターの縁にトレーを置くシーンなんて見慣れているから、私にはその指示の意味が分からなかった。
仕方なく、そのSWはトレーの山をサンキューボックス(ゴミ箱)の上に置き、その前で拭きあげを始めた。
しかし、ほかの事をするためにSWがそこを離れると、サンキューボックスの上にはトレーの山があり、とても邪魔だ。
詳しいことは知らないが、おそらくそのネクタイの叔父様は、この店舗のオーナーOCだろう。知らない方のために補足すると、OCとは店長の上司だ。その者のこだわりで、トレーを拭く場所を考えろと指示を出しても、それが「解」になっていない。サンキューボックスの前でトレーを拭けば、二、三人で下げ膳を持って来られると、置く場所が無くなりそこが汚くなるし、トレーが山になってペーパーナプキンも取れない。そして手薄になれば、どんどんその場が荒れてくる。
先の記事でも触れているが、こういうところが、上のこだわりと、現場のこだわりが合致しない。というか、客がいちばん欲している状態とちがうこだわりに脱線する傾向を感じる。一言で言えば、余計な指示だと感じる。
この作業の前に、その優秀なSWは良い仕事をしていたし、私はその仕事に大いに感動して、KODOする事を決めていた。しかし、次の対応によってその心は消え失せた。

その叔父様はこういう動きもしている。
私がオーダーし、商品を受け取るときに、カウンターでクルーと雑談をしていた。内容は新しくなった店舗について、いつごろリニューアルしたのかという、ふとした話題だ。するとその叔父様が側から何かしらそのクルーに指示を飛ばした。するとそのクルーは横目に会話をスパッと中断し「ごゆっくりどうぞー」と切り離すような素振りをみせる。
私にはこういう感想を抱かせる。
「余計なことは話さなくてもいいから追っ払え」
そういう指示と受け止めてしまうし、皆もおそらくそういう気分になるのではないだろうか?
私以外客はいないし、たかだか数秒話しただけで、そういう「裏合図」を送るこの者の存在、どうせ日々碌な店舗運営指導なんてしていないだろうと感じた。

客が来店すればドアを開け、子供を囲いウェルカムモードで接客するクルーとは裏腹に、客を歓迎しているとは到底思い難いビジネスの存在がとても気になる会場だった。

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審査中、気になったことをもう一つ。
二、三回、店内利用の客の取り揃えを間違えたらしく、客がフロアサービスのクルーを呼びとめてその旨を告げていた。クルーは即座にその間違えたトレーを引き下げるのだが、カウンターに戻ると、先程の叔父様がやってきて「トレーを下げるな」と指示している。クルーはもう一度その間違えたトレーを客の元へと運び、茶を濁している。
私は接客業のスペシャリストではないが、こういう行為に意味があるのかと感じてしまった。仮にもトレーを下げないとなると、間違えた方は無償提供という事なのだろうか?それはそれで対応が少しおかしいようにも感じる。どちらにしても、店長の上司、或いはオーナーが店に来て、クルーに指示を飛ばせば、そうやって余計に話を拗れさせる結果になる。よくもまあこんな状況でミニブロック戦という中盤戦を開催するものだと思った。
と、同時に、そこでここが気になったが、フロアサービス参戦クルーは、あまりにも「アクシデント」に対するスキルが無さすぎるという事だ。取り揃えを間違えることは、割と頻繁に起きるアクシデントだ。だからこそ、そういう時に適切な対処を誤れば、大きなクレームに発展しかねない。そこは少しトレーニングの中に取り入れた方が良いかなと感じた。

あともう一つ感じたこと。
それは参戦クルーが「客を見ていない」ということだ。
松葉杖の客を放ったらかし。ちびっ子も構わない、床に落ちている食べかすも見つけられない。そんな参戦者ばかりだった。そして、審査員もまた、そういうことをいちいち知らせる度に「そんな事も知らないのかよ!」と言わんばかりの表情。
上司も、クルーも、これで良いのか?
そういう気持ちにさせられた。

マクドナルドという企業、人とは、いちばんに「ポジティブ」の実践者ではなかっただろうか?
「ちゃんとやってくれよ」というネクタイをした審査員の表情。工夫をすべて打ち砕く業務指示、こういうところから、ポジティブさを微塵も感じることはできなかった。

ただ、一人すごいクルーが参戦していた。
担当はシフトマネージメント。
このポジションは「時間帯責任者」としてバイトクルーの取りまとめにはじまるマネージャーとしての顔と、客とのコミュニケーションを行うホスピタリティのプロとしての顔、それらがバランスよく審査時間内で発現しなければ、勝ち進むのは難しい。
私の気になったそのクルーは、全てにおいて無理せず自然体で、素晴らしいスマイルで戦い抜いた。そしていちばん感動したのは最後のシーンだ。
審査が終わると、審査員から呼び出されて店の外に出て、フィードバックという総評をするのがAJCCの決まり事だ。このクルーが呼ばれたとき、なんと審査員の「おしまい」指示を制し、カウンター中に入ってしっかりと引き継ぎしている。5分ほど審査員を待たせていたが、小走りでやってきて、フィードバックを受けに外へ出ていった。
審査中のスペックも申し分ない上に、本来審査に影響が出ないとも限らない、審査員への待ちの指示。そこまで職責を全うする姿こそ、真のマネージャーだよという私の心の中の賛嘆が止まなかった。こういうシーンは初めて見たし、審査中の姿も含めて言えば、もしかしたら日本一になるかもしれない、そんなクルーを見つけた。
ぜひ勝ち進んでほしい素晴らしいSWに熱いエールを贈りたい。

良い店舗体験を創るのは人。
しかし、それを台無しにするのも、これまた人である。
今日の店舗体験は、晴れのち雨。
そんなところだった。どうして雨になるのか、そこを感じてほしい。

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