2018年12月2日 AJCCファイナル

2018年12月2日。
私は六本木ヒルズクロスポイントにいた。
かつて放送制作をしていた頃にはアークヒルズによく来ていたが、最近はクロスポイントばかり来るようになった。
今年のAJCC(オールジャパンクルーコンテスト)のファイナル(決戦)の会場として、このクロスポイントにあるマクドナルド六本木ヒルズ店が今年選ばれた。
朝マック時間から乗り込み、コンテストの模様がよく見える席を確保して待機した。

到着するなり早々から声をかけてくださる本社の方もおり、辛口な記事が売りの的な〇〇としては若干の気負いもありつつ、次々と来場する関係者に目を配る。

去年のファイナルで声をかけてくださったハンバーガー大学の方が今年も私を見つけるなり声をかけてくれた。あらゆるイベントに顔を出す私だが、数回程度しか絡みの無い私のことを覚えてくれているのは嬉しいし、その場でもマクドナルドについて意見を丁寧に聞き出す姿には、さすがはピープルビジネスの人だと感心させられる。

今年のAJCC開催においては、異例な展開となった。まずは12月開催であるということ。これは今年度重なった自然災害により、足並みが整わずで後ろ倒しになったと聞いている。そして会場が六本木ヒルズ店であるということ。ここ数年、1号線池上店で開催されていただけに、何かしらの意味があるのかと思われる。そして、その六本木ヒルズ店とは別に、朝霞三原店と会場を二分しての開催となったこと。「ドライブスルーランナー部門」は六本木ヒルズ店にドライブスルーが無いので、別会場ということだろう。
そもそも、毎年のように1号線池上店を選べば良いのではないかと思うが、それにはある意図が見える。それは後述する。

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色々な想いが交錯する六本木ヒルズ店

六本木ヒルズ店はユニークな店舗建築だ。
1階は六本木通りに面し、入るとすぐに「マックカフェバイバリスタ」のブースがあって、喫茶店のような雰囲気だ。1階から2階へは店内からは階段とエレベーターで移動できるが、六本木ヒルズ森タワー側から自由通路を通ってダイレクトに入店できる2階部分はカウンター、キッチン、客席がある。一般的なマクドナルドのメニューは2階でのみ販売する。二つのフロアをセパレートし、クロスセル(双方の商品を双方のカウンターで受ける)をしないので、適度にトラフィックを分散できているし、バリスタはドタバタせず静かに寛ぎの空間を確保できる。

AJCCはマクドナルドクルー(アルバイト従業員)の技術コンテストだから、その働きを見られなければ意味がない。昨年まで開催されていた1号線池上店は、キッキンとカウンターが1階で、客席が2階だったから、観戦しようとすると1階で立見になってしまう。そういう点でも六本木ヒルズ店での開催はありがたい。

審査はお昼少し前からスタートした。

全国から集結したファイナリスト達は、それぞれに燦々とオーラを放ち、六本木の圧倒的なインカムで溢れかえる雑踏の中においても、一際輝きを放つ!その存在感たるや、まさにマクドナルドの宝といえる。

まず驚いたことがあった!
以前のこの記事に書いた、秀逸なSW(スウィングマネージャー)がファイナルに現れたのだ!私は以前チャンピオンを予測して当てた事があるが、「やっぱりな」と思える結果に胸躍った。何度も書くが、そのSWは中と外、完璧なマネージャーワーク、そしてコミュニケーション、最後審査が終わっても自分の仕事をきっちりと終わらせる責任感、全てが素晴らしかったので、勝ち進んできたのにも納得がいくし、これは優勝もあるのではないかなと期待感が膨らんだ。
審査中ではあったが、挙手してお呼びし、こう伝えた。
「野洲の開催で拝見しました!あなたは素晴らしい!必ず優勝できますよ!」
正直、シフトマネージメント部門は、多くの参戦者を見てきたが、アピールポイントがなかなか定まらないケースが多く、「巡回と点検」で終わってしまうパターンに陥りやすい。そんな中で、こちらの参戦者は、限られた時間の中で、マクドナルドの管理者があるべき姿を我々にもわかるように見せてくれるし、それは演じられたものではなかった。それはその所作を見ればわかる。

そのSWは審査が終わり、会場を後にする時、私の元にやってきて謝意を伝えてくれた。
私は色んな参戦者に出会うが、こうやって審査の後にひとこと言いにきてくれるクルーは内面に秘めたものを感じる。それは、審査後はツンとして、あー終わった終わったみたいなクルーには無い、人としての豊かさがある。感動を伝える、伝えられる事の素晴らしさを教えてくれる。

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今回はベストポジションで観戦

私の感じる今年のファイナルの印象は「基本的動作」だ。
今やファイナルあるあると化した「演出」とも受け取れる様々なワンフックが廃され、よりスマイルや基本的な動作に立ち返る、サービスの原点とも言うべき戦いだったように思う。今年は”GEL”(Guest ExperienceLeaer)という新しいタイトル(職制)もスタートし、よりサービス色を濃くしていこうという起源とも言える年となったが、割とSTAR(お客様係)に任せっきりだった「サービス」をもっと皆んなで考え直し、それを育てていくために磨きをかける。そういう取り組みの中で、AJCCの傾向としては、基本動作を洗練する流れになったように感じる。

以前から何度もこのブログで論じてきたが、勝ちにこだわりすぎて、雑技団のように色々なギミックを考え、持ち込みすぎていた中で、基本的なところで上質さが光るのは、私としてはとても嬉しいし、正統進化だと思う。
ことスマイルの仕上がりが凄い!ニューっとスマイルになるファイナリストは、おそらく全飲食業界でナンバーワンの癒しだろう。そしてどの接客ポジションにおいてもそれは結実している。

中でも気になったのが、OT(オーダーテイカー)の「筆談できます」という名札の下の表示。これは以前私がツイッターでもつぶやいていたが、航空会社のように名札に話せる他国語だったり、手話できるとかだったり、そういうバッジをしたらどうかという提言に合致する素晴らしいアプローチである。2020年、2025年に多くの外国人をお迎えする今、様々な人々が集うこの国のマクドナルドは、そういったフレンドリーサービスが求められる場所になるだろう。

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航空会社のようなスキルバッチは浸透するかもしれない

基本が大切だということ。
それを教えてくれるのは、指先まで張り巡らされた気持ちだろう。
OTが真っ直ぐに手を挙げてお客様の注意を引く。指先をそろえて手を組んでお辞儀をする、悩んだ時はメニューを指し示す、小さなお客様にバイバイしたりハイタッチしたり、手先が口ほどにものを言う。大きな声で、笑顔で、手を中心に「ボディランゲージ」を駆使することで、基本に徹しつつも、より美しく見えるものだ。
私の隣の席に外国人のグループ客が着席し、皆んなでナゲットを楽しそうに召し上がっていた。そこにフロアサービスのSTARがやってきて、「グーポーズ」(イイネのアイコンのような親指を立てたサイン)をしてきた。それに一瞬客もポカンとしたが、そのあとお互い見合い、グーポーズで笑いが生まれた。フロアサービスのSTARが朗らかな時間を生んだ瞬間だ。

そう。それらの所作とは「真心」が原動力なのだ。
人を喜ばせたい、笑顔にしたい、気持ちよくご利用頂きたいという、言われてやる義務的なものではなく、自分から想い、行動するという前向きさがそこにある。だから自然に手を動かしてしまうんだろう。

会場を訪れたクルーと合流して観戦し、ある話題になったが、それは「中からの声」だ。中とは、厨房の事を指す。
中ではひたすらにポテトを揚げたり、パティ(ハンバーグ)を焼いたり、ハンバーガーを組み立てるだけのクルーが働いている。彼らは、客からはとても見えにくいところで活躍している。
客から見えにくいということは、客が見えない。そうなってくると、人相手の仕事ではなく、モニターと、目の前の「物」との向かい合いで、自分との戦いになってくる。タイムとか、セールスとか、大量オーダーでだんだん悶々としてくる事だろう。
しかし、中から聞こえる「いらっしゃいませ!!」の声は、そんな空間で働きながらも、客の存在をイメージしている証だ。特にポテトパーソンは割と客に近いところに居るからこそ、ただただポテトを揚げるのではなく、威勢の良い発声で、中のムードアップをしてほしい。
ことポテトに関しては、マクドナルドの花形ポジションだけに、かっこよく働いてほしい。

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AJCCで輝くクルーはいつまでも見ていられる

審査も中盤にさしかかる頃、副社長が会場に現れた。
驚いたのは客には一切頭を下げない。偉そうにフロアを徘徊している。当然ながらファイナルの模様なんてどうでもいい様子だ。
現場主義を謳う彼は、床に落ちたポテトも拾わない。客のトレーも受け取らない。
最上級の質を競うクルーがすぐそこにいるのに、この温度差は何かな?と思わざるを得ない。
それこそ、満面の笑みで現場主義を語る記事などで露出してる訳だから、見る人が見れば誰だか分かるし、メディアの刷り込みとのギャップを感じたりするだろう。

クルーがやる事を、ネクタイを締めたものがやらなくていい事はない。いやむしろ、私の知るCEO、COOとは、いちばん客に近しい存在である。だからこそ、平社員よりも表では手先を動かさなければならない。
つまるところ、副社長の「客」とは、商品を買うお客様ではなく、食材を買い、ロイヤルティーを払うFCオーナーなんだなと思ってしまう。それは去年のAJCCファイナルでも感じたことだ。
フランチャイズ比率7割の今、分からなくもないが、客を見ていないというところは、そういうところからポロポロと見えるものだ。

エグゼクティブはバイトクルーよりも質が悪かった。
そんなことでは、また客が離れていくだろう。

しかし他方で、本社からやってきたメンバーは、大変な混雑の昼ピークにおいて、空下げ、床掃除、ラインメイクを率先して行い、以前とはだいぶ「印象」が変わったと感じた。以前はそういうことを全くしないで腕を組んでただ見ているだけだったが、審査を円滑に進めるべく黒子になりきり、協力してファイナルを成功させようという行動には感心した。

特筆すべき点として、今年のAJCCは色々な点が例年と異なったことがある。
会場となる店舗については前述の通りだが、会場内のゾーニングについても新しい取り組みが成され、営業中の店内で客と関係者が入り乱れたことへの対策か「関係者ゾーン」を整え、そこは一般客が入れないようになっていた。稼働できる席を確定数量で確保するという取り組みとして評価できると感じた。
そして一番の異例さは、情報の非公開化だろう。毎年AJCCファイナルには、多くの熱心なマクドナルドクルーが見学にやってくる。それは事前にも開催情報をWebSMILE(イントラネット)で得ることができるからだ。しかし、今年はその情報開示が無かったと聞く。この点においても、おそらくファイナルの開催自体をもっとブラックボックス化したいという思惑があるように思う。

しかし、これには疑問がある。
私はクルーに、もっとストアツアーをしてほしいと思っているし、ことAJCCファイナルについては、最高峰のサービス、技術が見られる訳だから、もっと視るべきだと思っている。もちろん私含めて、しっかり店内で飲食すれば普通に客だ。
飲食もせず、パソコン開いて大きく席を占有してきたビジネスの存在とはちょっと違う。現に見学に来ていたクルー達は飲食もしているし、可能な限り相席していたようだ。
自分達の仲間のチャンピオン戦を観たい!そう思うのは当然だろうし、そんなトップランナーに憧れる気持ちもわかる。それを規制してしまうと、せっかくのやる気とか、情熱が冷めてしまうし、何より継承されない。
そうなってくると、益々「AJCCとは何か」という疑問が大きくなってしまう。社外だけでなく、社内に対しても秘密主義になってしまったら、レイバーのことを突き放す事にはならないのだろうか?

全OTの上質な接客を受けたくて、サジェスト(おすすめ)を受けていたらこんな有様になってしまった。
やや寒い日だったので、ホットコーヒーだけでも相当飲むことになった!

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ファイナルに相応しい宴のあと

今日の審査結果は私はアウターなので知ることができない。
風の噂を待つ事にする。

帰宅して、あるクルーとやりとりしているなかで、自分が納得できる発言をしたので、それをここに書きたい。

AJCCとは、以前の記事にもあるように、ピュアなものではないのは知っている。
しかし、だからといって色眼鏡になってしまっては、悲しいものがある。
はっきり言っていきなり参戦して、いきなりチャンピオンになれるほど甘くはないし、もしかしたら今の仕事のやり方で間違いが多々見つかるかもしれない。
AJCCは毎年夏から秋にかけて審査されるが、取り組みが早い店ではもう2月頃からクルールームにコーナーを設け、店一丸となってムードを盛り上げる。

AJCCに参戦するということ、それは契り。

私はより一層マクドナルの仕事に磨きをかけ、成長するという決意表明なんだ。
それを高らかに宣誓し、皆んなに注目され、叱咤激励を浴び、ストアツアーして技を吸収したり、フィードバックをもらい、日々の業務を上質なものにした上で、参戦の日を迎える。
結果は後についてくる。そのマクドナルドとの指切りげんまん、契りを胸に一年間走り続ければ、結果はきっと出てくるし、自分は大きく成長しているはずだ。
だから、あなたも高らかに参戦を宣言してほしい!

AJCCは、技術コンクールという小さい存在ではない。
そこから得られる経験値こそ、長い人生を豊かに生きるための大きな実りだ。
また来年、ここで感動したい。

2018年10月7日 AJCC会場にて

今年からAJCCの記事はフェイスブックに展開している。
理由については過去の記事を読んでほしい。
何回か会場で食事しながら審査を拝見しているが、今年は今年で色々と発見もある。
興味がある方はフェイスブックを見て頂きたい。

今回やってきたのは「8号線野洲店」
実はこの店舗、昨年も訪れている。その時の記事はこちら
ミニブロック戦というのも去年と全く同じ。今年はどんな戦いが見られるのだろうか。

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二度目の訪問なので見覚えのある外観。早速中にはいると、今いちばん新しいインテリアにリニューアルされており、大変驚いた。

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箱の新しさは、今全国でリモデルしているので、それほど新鮮さは無い。どちらかというと、その箱を活かす「人」に注目している。だからこそ、神奈川県から遠路遥々滋賀県まで来て、それもマクドナルドに向かうのだ。
私の友人にその話をすると、みんな一様に爆笑する。マクドなんて近所にあるだろうにと。そこで私はこう話す。
「マクドナルドはどれも同じに見えるけど、人やサービスは結構違うよ」
それを聞くと、またまた爆笑が返ってくる。
「んなことはない!」
とまで言われる。それはつまり、マクドナルドの接遇の良さを感じていないという事の暗喩でもある。それだけ世の中、特に関東では、その程度の店舗体験が蔓延っているという事を意味していると思う。つまり「マクドナルドなんてそのレベルだよ」ということを言いたいのだろう。

前回の記事でAJCCの存在意義に異論を唱えてから、この記事を書くのは筋違いと思われるかもしれないが、そこは少しニュアンスが違うので補足する。

40年以上も毎年行われてきたこの社内イベント。本来AJCCとは、「技術の向上とモチベーションを高める」というピュアな目的があってこそのコンクールだったが、年々その内容は変化し、今となっては、先の記事が示す通りで、「技術の向上」よりも「勝ち」にこだわったものになってしまった。
それは「審査の傾向と質」がそうさせていると思っている。AJCC自体によりより盛大なドラマを練りこむようになり、コンクールではなく「24時間テレビ」のように慣例化し、感動させるギミックがあり、そこに勝ちたい一心でしかないクルーが集まる。その戦いで日本一になるという目的は素晴らしいが、かなり「背伸び」しないと勝てないものに成り代わってしまったのだ。
考えてみれば、今や「海外研修旅行」などのご褒美も廃止され、チャンピオンだけに着用が認められるスペシャルなユニフォームも廃止され、それではもう「日本一の称号」だけしか頂けるものが無い。だから仕方のない事かもしれないが。
そんな中でも、本質を理解し、真摯に努力しているクルーの姿、仕事への工夫とか、客の笑顔を引き出す素晴らしい接遇もまた多く見つけられる場所がAJCCだ。「マクドナルド的な〇〇」として活動する私の信条は「良いものを見つけて拡げる」という事だからこそ、その現場の息吹を感じたいというところなのだ。

審査そのものは、色々と「イイネ」が 見つかった。それはフェイスブックにまとめるので仕事の質を高めたいクルーは参考にしてほしい。

今回は少し違う切り口の事をテーマとして書き進めたい。

会場店舗のスウィングマネージャー(SW)は大変素晴らしい女性クルーだ。
何が素晴らしいかと言えば、ほぼ非のつけどころが無い完璧な仕事、漲る自信、豊かな表情、心配りというところか。そもそも、AJCCの会場店舗には地域の選りすぐりの参戦者が集う訳で、店としてもいちばん優秀なクルーを当日店に立たせるという事情もあるのだろう。

しかし、店内である事が気になった。

カウンターの隅で、そのSWがトレーの拭きあげをしていた。するとそこへネクタイの叔父様がやってきて注意している。聞き耳を立てるとこういう話だ。
「トレーをカウンターに積むな」
OT1、OT2で賄えるだけのインカムなので、OT3にトレーを置いても問題無いのでは?と思っていたし、カウンターの縁にトレーを置くシーンなんて見慣れているから、私にはその指示の意味が分からなかった。
仕方なく、そのSWはトレーの山をサンキューボックス(ゴミ箱)の上に置き、その前で拭きあげを始めた。
しかし、ほかの事をするためにSWがそこを離れると、サンキューボックスの上にはトレーの山があり、とても邪魔だ。
詳しいことは知らないが、おそらくそのネクタイの叔父様は、この店舗のオーナーOCだろう。知らない方のために補足すると、OCとは店長の上司だ。その者のこだわりで、トレーを拭く場所を考えろと指示を出しても、それが「解」になっていない。サンキューボックスの前でトレーを拭けば、二、三人で下げ膳を持って来られると、置く場所が無くなりそこが汚くなるし、トレーが山になってペーパーナプキンも取れない。そして手薄になれば、どんどんその場が荒れてくる。
先の記事でも触れているが、こういうところが、上のこだわりと、現場のこだわりが合致しない。というか、客がいちばん欲している状態とちがうこだわりに脱線する傾向を感じる。一言で言えば、余計な指示だと感じる。
この作業の前に、その優秀なSWは良い仕事をしていたし、私はその仕事に大いに感動して、KODOする事を決めていた。しかし、次の対応によってその心は消え失せた。

その叔父様はこういう動きもしている。
私がオーダーし、商品を受け取るときに、カウンターでクルーと雑談をしていた。内容は新しくなった店舗について、いつごろリニューアルしたのかという、ふとした話題だ。するとその叔父様が側から何かしらそのクルーに指示を飛ばした。するとそのクルーは横目に会話をスパッと中断し「ごゆっくりどうぞー」と切り離すような素振りをみせる。
私にはこういう感想を抱かせる。
「余計なことは話さなくてもいいから追っ払え」
そういう指示と受け止めてしまうし、皆もおそらくそういう気分になるのではないだろうか?
私以外客はいないし、たかだか数秒話しただけで、そういう「裏合図」を送るこの者の存在、どうせ日々碌な店舗運営指導なんてしていないだろうと感じた。

客が来店すればドアを開け、子供を囲いウェルカムモードで接客するクルーとは裏腹に、客を歓迎しているとは到底思い難いビジネスの存在がとても気になる会場だった。

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審査中、気になったことをもう一つ。
二、三回、店内利用の客の取り揃えを間違えたらしく、客がフロアサービスのクルーを呼びとめてその旨を告げていた。クルーは即座にその間違えたトレーを引き下げるのだが、カウンターに戻ると、先程の叔父様がやってきて「トレーを下げるな」と指示している。クルーはもう一度その間違えたトレーを客の元へと運び、茶を濁している。
私は接客業のスペシャリストではないが、こういう行為に意味があるのかと感じてしまった。仮にもトレーを下げないとなると、間違えた方は無償提供という事なのだろうか?それはそれで対応が少しおかしいようにも感じる。どちらにしても、店長の上司、或いはオーナーが店に来て、クルーに指示を飛ばせば、そうやって余計に話を拗れさせる結果になる。よくもまあこんな状況でミニブロック戦という中盤戦を開催するものだと思った。
と、同時に、そこでここが気になったが、フロアサービス参戦クルーは、あまりにも「アクシデント」に対するスキルが無さすぎるという事だ。取り揃えを間違えることは、割と頻繁に起きるアクシデントだ。だからこそ、そういう時に適切な対処を誤れば、大きなクレームに発展しかねない。そこは少しトレーニングの中に取り入れた方が良いかなと感じた。

あともう一つ感じたこと。
それは参戦クルーが「客を見ていない」ということだ。
松葉杖の客を放ったらかし。ちびっ子も構わない、床に落ちている食べかすも見つけられない。そんな参戦者ばかりだった。そして、審査員もまた、そういうことをいちいち知らせる度に「そんな事も知らないのかよ!」と言わんばかりの表情。
上司も、クルーも、これで良いのか?
そういう気持ちにさせられた。

マクドナルドという企業、人とは、いちばんに「ポジティブ」の実践者ではなかっただろうか?
「ちゃんとやってくれよ」というネクタイをした審査員の表情。工夫をすべて打ち砕く業務指示、こういうところから、ポジティブさを微塵も感じることはできなかった。

ただ、一人すごいクルーが参戦していた。
担当はシフトマネージメント。
このポジションは「時間帯責任者」としてバイトクルーの取りまとめにはじまるマネージャーとしての顔と、客とのコミュニケーションを行うホスピタリティのプロとしての顔、それらがバランスよく審査時間内で発現しなければ、勝ち進むのは難しい。
私の気になったそのクルーは、全てにおいて無理せず自然体で、素晴らしいスマイルで戦い抜いた。そしていちばん感動したのは最後のシーンだ。
審査が終わると、審査員から呼び出されて店の外に出て、フィードバックという総評をするのがAJCCの決まり事だ。このクルーが呼ばれたとき、なんと審査員の「おしまい」指示を制し、カウンター中に入ってしっかりと引き継ぎしている。5分ほど審査員を待たせていたが、小走りでやってきて、フィードバックを受けに外へ出ていった。
審査中のスペックも申し分ない上に、本来審査に影響が出ないとも限らない、審査員への待ちの指示。そこまで職責を全うする姿こそ、真のマネージャーだよという私の心の中の賛嘆が止まなかった。こういうシーンは初めて見たし、審査中の姿も含めて言えば、もしかしたら日本一になるかもしれない、そんなクルーを見つけた。
ぜひ勝ち進んでほしい素晴らしいSWに熱いエールを贈りたい。

良い店舗体験を創るのは人。
しかし、それを台無しにするのも、これまた人である。
今日の店舗体験は、晴れのち雨。
そんなところだった。どうして雨になるのか、そこを感じてほしい。

たったひとつのこと

最近、このブログもAJCCに関するキーワードインが増えている。
※AJCC(オールジャパンクルーコンテストの略で、日本マクドナルドが年に一回、夏から秋にかけて繰り広げる、日本一を決定する技術バトルのこと)

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きっと全国の参戦クルーが今年も動き出したのだろう。まずはサクッと検索して、今までの勝者の情報を得ようとしているのだろう。
今やスポーツの世界でも情報戦だからこそ、調べるのも一つの戦略かもしれない。

私はAJCCの審査員ではない。
しかし、全国のクルーから、どうすれば勝てるのか?どこに注意すればいいのか?場合によっては、実際働きを見てほしいというお声も頂戴する。
全国のマクドナルドをポケットマネーで廻り、多くのクルーと出会い、対話をし、良いところや、努力がいるところを見てきた、あくまで「客席側」の意見を貪欲に欲してくるクルー達には、いつだって何かしらの道しるべになれるよう、私も向き合ってきている。それだけに、秋に行われる決勝戦さえも他人事とは思えず、毎年観戦に出向いている。

何度も唱えてきているが、最近はAJCCの傾向が変化している。
それは、芸能人のような「スターありき」になってきているところだ。
スターといっても、お客様係のSTARを指しているのではない。アイドルや歌手、俳優の類のスターを指している。
どういうことか説明すると、先に示した通り、AJCCとは「技術コンクール」であって、それは日々の仕事を見せる戦いである。しかし、様相は一変し、今となっては「演者優位」であり、それ以上に「頭脳戦」になりすぎている感がある。それは偏に、実力戦ではなく、アイデア戦となり、肝心要の接遇でさえ、過剰な演出が目立つようになってきた。

AJCCの審査そのものが、そういうものを評価する傾向はある意味仕方ない。それが日本のマクドナルドが目指す姿であれば、否定のしようが無い。しかし、その「俳優」のようなクルーの所作が、まったく「客側」には、心に響かないものになってきていると思うのである。

以前、臨店した店のサービスマネージャーがこんな事を言っていた。
「フロアのクルーには『午後はブラインドを下げる』ではなく、どうしてブラインドを下げるのかを考えさせている」という。
大して西日が眩しくもないのに、決められているからということでブラインドを下げてしまっては、せっかくの外の景色が見えない。かと言って、カンカン照りの日にブラインドを下げなければ、暑くていられやしない。「午後はブラインドを下げる」はそうしたほうがいいというだけで、実際今日は下げるべきかという、クルーの感性がそこで活きてくる。そういうフロアサービスをやるべきだというものだった。

マクドナルドは良くも悪くもマニュアル化されている。
そして、ルールに沿うことは大切だが、決められたことだけをやり続けていると、創造性が枯れ、ルーチンワークのような動きに落ち着いてしまうものだ。

「〇GC〇ラウンド」とか、決めているから、最低でもそれだけやればいい。ではない。

AJCCに参戦するクルー全員に、これだけは共通して伝えている。
「決められたことをするのは大事だけど、感じる事が大事」

なぜカウンタークロスは2種類あるのか。
なぜ1時間に1度手洗いをするのか。
なぜフロアサービスが必要なのか。
なぜ客は意見してくるのか。
なぜ…

考えればきりがない。
しかし、言いつけられた事を無感情にやるよりも、自分の心で感じて、そこで得られたインスピレーションから行動するのとでは、明らかに違い、そこに気づきが生まれる。

「フロアサービスはどうすれば勝てるのか」
「シフトマネージメントの戦い方がわからない」

そういう悩みは、きっと感じることを忘れているから起きるんだと思う。
情報戦で調べる前に、まずは自店舗で、次のインから、日頃の仕事の一つひとつを感じながらやってみてほしい。

そしてもうひとつ、これもAJCCで役立つことだから書く。

クルーと客が会話したりすることに、過剰に反応する店がある。
客席でちょっとお喋りした後に、そのクルーがカウンターに戻ると、マネージャーがそのクルーにこちらを見ながら(睨みながら)ヒソヒソ話。
聞かずとも何を言いたいのかは推測がつく。クレームを言われたのかの確認行為なのだろう。
私が何度も唱えてきている事だが、そういう非常線を日々敷いて、上辺だけで客を招き、心の底ではいつもクレームに怯える。だからこそ目つきも悪くなる。そういう店は本当に多い。

昨年ある事件が私の目の前で発生したが、本部でさえ、客を最大限警戒した上で、マクドナルドが成り立っている現実だ。
そういう警戒心とは、なぜ必要なのだろうか。日々の仕事に自信が無いのだろうか。

AJCCで光るクルーにはそれが無い。
無警戒でいろという訳では無いが、先に示した通り、義務的に恣意的に客と言葉を交わすのではなく、自然にありのままで、会話することができる。
時に気づいた事を伝える時には、名刺を差し出し、サッとメモを出して書き込む。
それをしなければいけないとは言わない。それができることが、日々の感じ方によるものだと思う。そのマニュアルに無いであろう所作にこそ、審査員以上に顧客が感動するはずだ。

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この画像は思わずアテレコしてしまいそうなシチュエーションの画ツラだ。

SW「いつもご来店ありがとうございます!本日は楽しんで頂けていますでしょうか?」
客「もちろんですよ。それにしてもこの赤い服の店員さんは素晴らしいですね!」
ふたり「ありがとうございます!」

何よりマネージャーの自信溢れる表情がいい雰囲気を醸している。自信は日々の仕事によって形成されているものだから顧客との向き合いで自然と溢れ出る。自信がなければこうして顧客と正対することはできないだろう。そしてこの情景には警戒心は無い。心の扉が開かれた瞬間とでも言うべきだろうか。
ただマニュアルに沿ってKODOカードを配ったりすることはあるかもしれないが、こういう一息ついたリラックスした空気感でコミュニケーションできる店舗体験とは、相当希少である。だからこそ、それには格別の感激がある。

「客の話を聞き出す」というのは義務的だ。しかし、ふとした会話(今日は良い天気ですね)などから入るごくごく自然な対話から、日々店について、クルーについて思うことなどを、気軽に聞き出すこともできるだろう。相手を警戒するのではなく、まずは自分から心を開くこと。それができなければ、客も心を開くことはない。

AJCCは実際に営業中の店舗で行われる。
他社では関係者が客に扮装したりして、コンクールしたりするが、マクドナルドでは実地で、多くの顧客を相手に、本番を迎える。
100人の顧客を前に、答えは100通りある。限られた審査時間で、場の空気、顧客の心、場合によってはクルーの心、それらを感じるのはなかなか大変だ。
でも、日々心を通わせ、感じることに慣れていれば、きっとすぐに答えが出せるようになるだろう。

たったひとつの大事なこととは、自分の心でいつも感じて行動することだ。