日本国内に3000店もあるマクドナルド。
コンビニ級に店舗数があると、良い店悪い店とバラツキがある。
一体何が「良い」とされるのか、おそらく何気なくマクドナルドを利用している人にはピンとこないかもしれない。
数百件は廻ってきたであろう私の「好み」の話になるが、そんな「お気に入り」の店を、このカテゴリーでは紹介していきたい。
栄えある第1号は千葉県にある『408成田美郷台店』だ。
実はこの店舗、今回初めて利用した。
ただの一度だけの利用で、そこまで虜にしてしまう理由とは…。
店は駅前立地ではなく、街道型店舗で駅からとても遠い場所にある。
近所の住民か、車での利用が殆どだろう。
私はこの店に行ってみたかった理由が二つあった。
一つ目に、去年AJCC(オールジャパンクルーコンテスト)の会場で、秀逸なクルーを見つけ、そのクルーがこの店で働いていると聞き、日々の活躍ぶりを拝見したいと思ったこと。
そして二つ目に、ある仕掛けがあるというので、それがとても気になっていたからだ。
店は現行のデザインを纏ったワンフロア展開のDT店舗。
そして看板には「McCafe by Barista」の文字が光る。
そう、この店はバリスタが淹れてくれる特別なコーヒーが愉しめるのだ。
特別な店舗体験は、入って早々スタートした。
年甲斐も無く、ハッピーセットの収集をしているので、この日もランチにハッピーセットを加えた。
ちょうど今は「リラックマ」シリーズのプロモをやっていて、欲しいトイが決まっていた。
オーダーテイカーからの素早いサジェストも凄いと思ったが、ハッピーセットのオーダーの時に「このオモチャが欲しいなぁ」なんて言っていたら「席でお待ちください」という事で、商品を受け取って、着席して食事をしていた。
すると先ほどのクルーが、席までオモチャを持ってきてくれた。
それは欲しいなと思っていたもので、わざわざ見つけてくれたのだ。
私は駄々をこねた訳でもなく、無理をお願いした訳ではないが、進んでやってくれる心意気、スマイルでそれを持参してきてくれたことに、「満足度レベル」がグンとアップした。
今、マクドナルドは、クレンリネスに力を入れている。
つまり「清潔」であること。
食事をしながらとても気に入ったのは、CREWからMGRまで全員参加で、店内の、特に床を清掃する姿だ。
それも、ただ惰性で「やらされている感」ではなく、とても丁寧に清掃している。
これだけでも、実はかなり高配点だったりする。
西日が差してきて眩しい時間帯も、ブラインドをさりげなく下げに来たり、そういう小さい配慮が素晴らしい。
と、今度は、トレーを持ったクルーがやってきた。
マックカフェで提供している商品のお試し品として小さいカップを手渡してきた。
いやなに、そんな試供品なんてどこでもやっている…と思うかも知れない。
この日は日曜日で、そうでなくても大変混み合う。だいたいどこの店も忙しくて、そのような「余裕」を見せない。
しかし、こうやって実際に「できる」のだから、やり方一つなんだと思う。
実際、サンプリング中のクルーはそこまで慌ただしくは無かった。
店内の一角にある、この大きなフリップ。
これが今日この店に来た理由の一つだ。
店では「SNSパネル」と命名しているが、インスタ映えには欠かせない撮影をアシストするフォトレームだったり、手持ち道具を完備している。
正直、実際持ってみると、かなりしっかりした作りで驚いた。
さあでも実際、混んだ店内でこれを使うのはなかなか恥ずかしい…と思いつつ、クルーとおしゃべりしているうちに、撮影を決行した。
本来、ラテアートをインスタにアップするのが目的なのだが、これはもうひとつの「コミュニケーションツール」だと感じた。このフレームを使うことで、クルーと客のコミュニケーションの機会点となり、笑顔になれる。
こんな素晴らしいギミックは他店にはまず無いと思う。
一緒に写ってくれたクルーは、AJCCでも光る存在で、とても気さくにゲストを迎え、最高の店舗体験を提供しようという気持ちが伝わってくる。
だからこそ、ケーキを載せたお皿、カップ、全てに「おもてなしの心」が注がれている。
実はこういう体験的なもの以外にも、評価している部分がある。
それはクルーの「所作」である。
マクドナルドというと、おそらくその大半が「忙しい」オーラを出す。
そして場合によっては、それを美徳だと思っている。
早さ在りきの接客、製造、提供と、それはそれで良いのだが、客側から見たときに、雑味に感じることがある。
例えば、レジでニッコリしていても、スッとキツい表情に切り替わったり、何か話しかけても、今それどころじゃ無いと言わんばかりに無愛想にされたり、そうなってしまうと、客が気を遣うようになってしまう。
客が萎縮してしまったら、コミュニケーションなんて生まれない。
おそらく、毛羽だった心は、クレームを探したり、揚げ足を取るような気持ちにさせられるのかもしれない。
それを想起させるものとして「皿」がある。
この店もまた「クロスセル」と言って、マックカフェの商品を、店内のブース以外のドライブスルーなどでも提供する。
時間を掛けて作るべきおいしいコーヒーを、タイムを意識したドライブスルーで提供するという矛盾の中で運用するので、クロスセル方式のマックカフェでは、お皿が「無地」になる。
ご存じスタバや、カフェの類いは大抵この皿を、コミュニケーションツールとし、文字なり、絵なりを描いて提供する。
しかしこの店は、皿を無地にしない。
忙しくても、それを忘れていない。
後にインスタに私も投稿したのだが、この店が腕を振るったアートのファンになった方から反響があった。
その方は、どんなに忙しくても、客をもてなすという同店のこだわりのファンとなり、それをSNSに掲載し、そしてリピーターとなっている。
忙しくてやっつけ仕事で顧客を失うよりも、忙しくても絶対領域は崩さないというこだわりで、ファンを獲得する。
もしかしたら、とても遠回しなことかもしれないが、結果的にとても良いことだと思う。
マックカフェがあろうと、無かろうと、サービスリーダーを配置する今、マクドナルドは今までの「拘り」から脱却する必要があると私は想う。
早さのために多くのことを犠牲にしている事に、そろそろ気付くべきだろう。
早さは時として「悪」でもある。
かけがえのない今日という日を最高の思い出が生まれる場所にする。
もしかしたら、この店はそれが可能な日本で希少な店舗なのかも知れない。
SNSパネルのキャプションには、とても良い言葉が並んでいた。
「バリスタが作る一杯は人の手だからこそ味わえる『Something』がたくさん」
「真心・思いやり・愛情・おもてなしの心をひとつひとつのカップに注いでお届けします」
成田に行く機会があるときは、ぜひ立ち寄ってみて欲しい。