青いマックの日はマクドナルド復活の日だったのか

久しぶりのブログ執筆となった。
というのも、ここ数年の記事を読み直して頂いてもわかる通りだが、この会社を取り巻く様々な出来事は、本当に冴えないことばかりだった。悪いことを悪いなりに記事にするのもあまり気分の良いものではない。そもそもこのブログを開始した時のスタンスとは乖離してしまっている。だから復活の兆しがあれば、その時にまた執筆しようと決めていた。

2022年11月6日

大々的な広告展開でご存じの方も多いと思うが、「青いマックの日」と銘打ち、DMHC(ドナルドマクドナルドハウス)のチャリティイベントとして、年に一度、たった一日だけ、ターゲットデイとして顧客と最も近い、各店舗でイベントを開催するというものだ。私も一ヶ月ほど前から、SNSのリスティング広告などで開催情報を知り、カレンダーには11月6日に印をつけていた。

世界中で”McHappy Day”はDMHCの認知を拡める一大プロモートだ

そもそも、日本国内においては、この全世界のマクドナルドが特別な一日として盛大に盛り上がるイベントに、ほとんど乗ってこなかった。
「コロナだったから仕方ない」と言うかも知れないが、それは言い訳だ。新型コロナウイルスが蔓延する前から“McHappy Day”は毎年開催されてきたが、日本では精々支給されたポスターを掲出する程度で営業もいつも通り行い、“McHappy Day”というチャリティイベントの持つ意義などは、もはや店の従業員すら意識するレベルでは無かった。そういう意味では、“McHappy Day”に類する(呼称として)「青いマックの日」を開催するという知らせは、過去のそれとは違い、惰性でするものとは違う意欲を感じるものとなった。

SNSが台頭する現在、多くの店が「青いマックの日」の準備を大分前から開始していることを知る。なんとなく店先にワンコーナーという細々としたものもあるが、中には、店全体をデコレートして、アイデアを凝らした「青色」を主体としたインテリアに変化していく様を見せていく店もある。今年は数時間で完成するものではない「趣向」を凝らしたものが多いように感じる。そして私は昨年までの「ポスターだけ」ではない「青いマックの日」のリアルを感じたく、ある店へのビジットを計画した。

マクドナルド平塚山下店ももうすぐR.O1周年を向かえる

神奈川県は平塚市に所在する「マクドナルド平塚山下店」である。
現在この店が、私の見てきた多くのマクドナルド店舗で最も優れていると感じていたからだ。
そう。ここ最近、私はマクドナルドに行くのが「怖い」のである。コロナ特需で爆裂的にインカムが上がり、反面でクオリティとホスピタリティは枯渇し、とてもゆったりと食事できる環境には無かったから、ヘタな店で気分を悪くしたくないから、間違いない店で…という思いもある。

昼前、店に着くなり、はみ出すほどの長蛇の列。これは異常な混雑っぷりだ。
そんな中で、混雑しピリピリした空気を柔和にし、さっそく入口付近で「青いマックの日」をアピールするGELと遭遇した。

気品溢れるGELによる青いマックの日のPR

賑やかでいいではないか!これこそ世界が一体的に行うチャリティイベントだ!日本だけが金儲けを優先するなんてダメだ。店内に入ればクルー達も統一したTシャツにマスクで、特別な日であることは一目でわかる。
それにしても昼時という事もあり、大変な混雑だったので、飲みものをオーダーして空いてくるまで人心地つけた。

爽やかなピーチフレーバーアイスティ

さて、今日のビジットだが、もうひとつ私の目で確認したいことがあった。
それは肝心な「食事」の部分である。何を言っているのかわからない。という方も居られることだろう。

私はこのブログでかれこれここ二年ほど唱えてきている事だが、「プロモーション(限定メニュー)が全然おもしろくない」という実態がある。それは私が個人的な感覚を述べているのではなく、様々なサーベイにおいても顕著であり、売り手も買い手も萎えている。まったく代わり映えしないプロモを連続させ、それが「当たり前」になってしまった。経営合理化策の中で、顧客本位ではない、どちらかというと「インナー(取引先含めた内輪)本位」へと推移し、食べもの屋にして食べものが不作という由々しき状況にある。

最後にピュアな新作をリリースしたのっていつだっけ?
そう思わせるものがある。このブログでも過去には「食べ比べ」を何度かしていたものの、今はまったくその兆しさえ無い。ところが、ついに数年ぶりとなる「ALL NEW」なサンドイッチを纏ったプロモが見参した!

突如現れた「時をかけるバーガー」は岡田准一さんを起用

「時をかけるバーガー」

歴代のFIFAワールドカップ™大会をイメージした3種類のバーガーが期間限定で10/26(水)から新登場!ということで、季間品である「月見バーガー」プロモ明けから、奇をてらう(褒め言葉)商品ラインナップを放ったのだ。

見た目のインパクトも然る事ながら、私が注目したのは「内容」だ。「UHC(Universal Holding Cabinet)寄せ集め」と揶揄してきた「ありきたり感」からの脱却だ。

バンズ(パン)もあまり見かけないものだし、挟んでいる具材も「使い回し」だけで構成してきたここ数年のものとは違う。いつも「味が容易に予想できる」プロモーションだったから、ここ最近は食べる意欲すら無かったが、久しぶりに「どんな味かな?」という興味も手伝い、前述の通り「間違いない店で賞味したい」ということで、もうひとつの目的とはズバリ新作バーガーの実食だ。

サイド無しで時をかけるバーガーを攻略する

店が程よく空いてきた13時過ぎに、さっそくオーダー。3個食べ比べなんて何年ぶりだろうか。
そして御年50歳だが、量的に食べきれるか不安だ。。。

こく旨かるびマックは唯一のボックスIN
バツグンのアピアランス

プロモの並びと同じ流れで食べていこうということで、第一弾は「こく旨かるびマック」からだ。
2002年のW杯を彷彿とするメニューなのだそう。唯一ボックスに収まっての登場。
正直これはあまり期待視していなかった。何故ならカルビマックは過去にも何回かやっているので、この商品は新商品ではないからだ。食べた感じはとにかくレタスの千切りの量が多い。まるでサッカーのピッチを思わせる(笑)。ただかるびフィリングはなかなか異色な世界観を出している。これはこれで悪くない。

ワイルドビーフバーガーはブラジル感ある個装ラップ
オニオンフライはカリカリ感足りずだが安定の旨さ

今回のプロモは本当に「開けるのが楽しみ」だなとワクワクさせるものがある。
第二弾は私の期待作「ワイルドビーフバーガー」。2014年のW杯を「イメージ」した作品らしい。過去にも記事を書いているが、2014年のプロモは大変勢いがあったのを思い出す。
個装はここからなぜかギフトラッピング。手が汚れないので有り難い。

まずは問答無用に旨かった!若干使い回し感はあるものの、オニオンフライとか食感で頑張ったのは評価できる。なんといってもサンドイッチは「平凡」よりも「斬新」であり、食感で無限大にレシピが想像できるという食べものだから、このぐらいのバリューで初めて「サマ」になる。ただ、チーズもどきの「謎ペースト」(これはアメリカンデラックスで使っていたものと類似)がなんとも不思議?微妙?普通にとろけるチーズで良くないか?という思いにはさせられたが、それ以外はバランスも良く最後のひとくちまで楽しめた。

ヤケドするほど熱いらしいケバブ風チキンバーガー
なんやかんやでこれが一番旨い

さあそろそろ満腹になってきた…持ち帰りで…なんて生易しい事は言いません(笑)。今日はなんとしても三個を完食しなければならない。

しかし最後となる「ケバブ風チキンバーガー」は割と楽しみにしていたもので、勇み足でラップを拓く。
こちらは2022年。今年のW杯はこんなかな?というイメージの元にセットアップされている。これ、食べるまで気が付かなかったのだが、チキンフィレがサンドされている。かつて問題を起こしてから下火になってしまい、ちょろちょろと希に登場する希少なチキンサンドなのだ。ビーフより優れているのは、何より「リッチ」に見えることだろう。ビーフパテだと「平板」なのだが、チキンの場合は厚みと衣の分でかなり得をして背高になる。薄いより厚い方がサンドとしては優秀であり、正義なのだ。

最後の一個は満腹での実食だったが、個人的にはこれがいちばん旨く感じた。その最大理由は「ハーモニー」である。先に触れた通り「食感」はありふれたものではないし、ソースとチーズ、具材の「味の共演」が良い。私の言う駄目プロモとは、ソースで味を誤魔化したサンドだ。言い換えるとソースの味しかしない。マクドナルドはソース屋になったのだろうかと見紛うほどに主張が強いソースが溢れる。しかし、弱めの味がブレンドされ、素材の持ち味を引き立てる。これは久しぶりの”DELICIOUS BURGER”だ。最後の一個は残すことなく胃袋に収まった。

お約束のゴミ山

マクドナルドは変わった。

この言葉は私の中でいつも悪い意味を込めた揶揄だった。それはいつも過去の黄金期を裏付ける本当の意味でのナンバーワン企業であったマクドナルドが、経営改革によって骨抜きになり、働く人々は、ただ忙しい中で効率ばかり求められ、ホスピタリティはどんどん排除されていく運命。藤田田時代を知る、原田泳幸時代を知る人々はどんどん去っていく。そういう意味での「変化」を総称する意味合いでの揶揄である。良い方向に流れる事がはたしていくつあっただろうかと、食後のパーキングに輝くゴールデンアーチを見つめて思うのだ。

ゴールデンアーチは一体何を想うのか

と、そこに白いクルマが入庫してきた。よく見ると同法人のオーナーが手を振っている。
アポイントをしていた訳ではなかったが、運良く会うことが出来、着席して対談できた。不思議な縁で数年前のAJCC会場で出会って以来、いつもどこかの店先で鉢合わせとなる。いつも現場にいるオーナー、そしてインナーでありながら、いつもアウターの姿を見つめるその姿勢に、私もいつしか「ミスターマクドナルド」として賞賛する存在となった。
私が日本一愛するマクドナルドにて、年に一度のイベントを感じ、希なプロモに舌鼓を打ち、そして今日こうしてラストにオーナーとの語らいがある。そこでとても良い言葉を聴く事が出来た。

「このままでは駄目だ。オーナー力を今つけなければならない」
「私たちはピープルビジネスのマクドナルドだから」

マクドナルドの氷河期の話をした。そしてそこで語られた言葉は、誰に対する怒りでもなく、自分たちに対する新たなる道しるべであった。
その後とんでもない経営改革の波が押し寄せても、未曾有の流行病が蔓延しても、脅威のバブルをこの期に感じていようとも、進むべき道は我々の手の中にあるということ。

そう。EOTFが開始された2017年。それから今に至るまで。こと私が居る「平塚山下店」は2022年の今日もEOTFがそこにあり、そしてうまく回り始めている。必死ながらも笑顔をくれるカフェブース。流石の二名動員された上質なGEL、安定した品質のサンドイッチ。クレンリネスを実践する若きクルー、跪きミスがあった顧客の元で、最後には笑顔になって頂くというSHMの姿、もっと言うと外で誘導する警備員まで。しっかりとEOTFと向き合えば、多客期にあっても顧客は笑顔になれる。地道に培ってきた土壌には新しい芽が生え、そして華が咲く。そのサイクルがあること。ただ冷え冷えした空間で、笑顔も無くひたすら作るだけの店が多い中で、こうして現在進行、進化系のEOTFが脈々と育ち、滾々と流れる河のように息づいている現実を、現場で感じることができた。

青いマックの日

今日という日はチャリティイベントだけれど、私の中には、ほんの少しだけ「マクドナルドが再起した記念日」と感じられる一日と成った。
そして思わずポーズをとりたくなった!

マクドナルド真の復活を少しだけ感じたオッサンのグーポーズ

しかし、依然として現存する問題はある。直営店はどちらかというと負のスパイラルに嵌まり、日々続々と押し寄せるインカムを「捌く」だけに帰結しているし、人々の悩みは尽きない。マクドナルドを支えてきたピープルは今の経営体質には異論を唱える。そして抜き差しならないEOTF。育たないストアは何故育たないか答を出せないまま、まるで幽霊船のように行方の無いクルーズを続けている。

勢いだけでは駄目だ。そして、POWER of ONEのようなプロパガンダでは駄目だ。今本当に必要なのは「オーナー力」のように思う。そして直営は「CEO力」というところか。確かに、今のCEOならなるほどと頷けるところもあるが、今後の展開に期待したい。

昭和生まれのオジサンなので「サラダ記念日」なんて言葉を知っているが。
今日は「マクドナルド復活記念日」として、日記に刻むとしよう。

宣伝勝ちではいけない

今、日本のマクドナルドは史上最高に儲かっている。
しかし、それは絶対いつまでも続かない。
今回はそれについて触れていきたい。

まず、皆に問う。
去年2018年、マクドナルドのプロモーション(期間限定販売品)で、これは面白かったとか、美味しかったとか、記憶に残るものはあっただろうか?

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これは昨年1年で取り扱ったプロモ商品のダイジェストだ。人それぞれに感覚の差異こそあるだろうが、私が見る限り、新しいものはそこに無い。その代わり、一年前、二年前に見たことがあるものの「マイナーチェンジ」ばかりで、そもそも商品自体「新商品」ではないし、プロモもその新しさとか、驚きを仕掛けたものではなくなっている。

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例えば、2010年から始まったこのプロモは、今でも色褪せなく記憶に残る、マクドナルドの「楽しい記憶」ではないだろうか。目新しいバーガー、続々登場するそれはお味も良く、毎週末はマクドに行こう!と決め込んだものだ。しかし、このところそういったプロモの楽しさを感じることが無くなっている。

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そして興味深いのがこの統計だ。
私達客側の意見ではなく、マクドナルドのクルー(従業員)でさえこう感じているという現実。商品を受けとる側の楽しさ以前に、その商品を作る側にも、楽しさが欠けているのだ。もっとミクロにフォーカスしてみると「プロモ商品が似ていて作り間違いやすい」という声もある。作り間違うほど似ているということは、当然入れ間違えも起こる。そうなってくると、エンドユーザーに届く商品に、もうその魅力は無い。

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どうしてこんなマクドナルドになり、それがここまで儲かっているのか。
この書籍に登場する著者がとんでもないものを持ち込んだからだ。

劇薬の仕事術

まさにそれは劇薬だ。劇薬とは医療品ではない。人々の「気」を荒ぶらせる薬のことだが、それは「マーケティング」のことを指す。

彼はマーケティングによって人々に「注目」させるところに火をつけてしまった。それは過去のマクドナルドが売りにしてきた「新商品」での驚きを失わせ、平凡な既視感バーガーでもそれなりに売る「劇薬」なのである。

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この商品(ベース)は既存メニューであるダブルチーズバーガー。そこにソースをチョイ足ししただけの平凡な商品を、食べ比べだの投票だの、そういう「劇場型」の煽りプロモを企画し、SNSでの拡散を執拗に迫ってくる。そしてこのプロモは去年の今頃にも同じことをしている。つまり何にも開発陣は仕事をしていない。ということだ。

こういった企画とは「商品在りきのプロモ」ではない。
「プロモありきの商品」であり、商品よりも宣伝が勝っている。

すごい極端な例え話をする。

あなたがカッコイイ宣伝広告を見て、最新のiPhoneを買ったとしよう。
しかしそのiPhoneは、最新といいつつ中身は世代が古かった。新しいのはガワと宣伝広告だけだったらどう思われるだろうか。
商品とはお金を払い、所有する事で悦びを見出すものである。その対価を支払うということは商品やサービスに対して一定の期待権とか満足権を担保できなければならない。マーケティングが勝って商品が負けると、それは「誇張」でしかない。

その確たる証拠は「私達の記憶」にある。
過去のマクドナルドのプロモ、いくつ思い出せるだろうか。

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これらはまだ「再生請負人マーケター」が登場する前のマクドナルドの新商品・プロモの数々だ。2014年だけを見ても、記憶に残るものが数多く見つかるが、たった一年前のプロもが思い出せない。これが劇薬の仕事術の残したものなのである。

マクドナルドのCEOが変わるらしい。
来月の株主総会の後に、それは正式に決議されることだろう。
サラ・カサノバ氏の代で、先に示すように日本マクドナルドは大きく変化した。何より株価に作用することを冗長的にやってきたことで、過去最高益を達成した点は評価できる。しかし、それは「中身が伴っているか」という点では、頷けるものではない。
以前記事にしていたが、サラ・カサノバ氏自体その「マーケティング畑」にいたし、それがどれだけ「劇薬」なのかは知っている。だからこそ、足立氏にそれを思いっきり駆使させ、今の「売り方」にシフトしたとも言える。しかしそれは、「楽しさ」や「驚き」を奪い、潤いのない肌のようにカサカサなマクドナルドにしてしまったと私は思う。そしてその張本人である足立氏はもうマクドナルドから去っていった。

簡素な商品を冗長プロモで展開。SNSで拡散させて客を搔き集める

その調整弁を失った状態で客は押し寄せ、レイバーはその忙しさや違和感から去り始め、それを食い止めるのにもまた「マーケティング」を駆使してダンスを踊る。しかし人手不足は負のバイラルマーケティングと化し、歯止めが効かなくなってしまう。

つまり、客はマーケティングで増えた一方で、レイバーは減ったという事だ。

サラ・カサノバ氏が残したものとは何か。
マクドナルドという多くの客、レイバーの中にあるイメージをぶっ壊し、高効率とか合理性を追求し、店でのイベントやお客様係などの「潤い」の部分を劇薬をぶっかけて消し去ってしまった。最後の最後に始まった「おもてなしリーダー」も板についていないままだ。

商品の実力。ここが欠けていると、顧客は離れる。
実際離れている現実を、本社は知らない。それは、劇薬の仕事術が正しいと思い込んで疑わないからだろう。今日来店する客のトレーの上を見ても、プロモに乗っているものはほとんど無い。その劇薬に乗らない客が日々増え出している。そこに目を向けないで、いや、見て見ぬ振りで、毎年同じことをして、手堅く稼ぐスタイルに陥った。

もうマクドナルドに鉾は無い。盾だけだ。
その盾が欠けた時、本当にどうしようもない、再建不能なネックポイントがやってくる。
何を言いたのか。それ「現実を直視する」ということの重要性を再認識してほしいということだ。
少なくとも、私の周りで「今のマクドは昔より良い」といっている者は一人もいない。

せっかくサービスの質が高まりつつある今、こんなヒットばかりでホームランを狙わない商品で躱すばかりでは、客の心はだんだんとシケてくるし、サービスを頑張る現場のクルーに対しても大変無礼である。

深変とは、口ばかりだったのか。