GELと高級さと

近頃はもっぱらGEL(Guest Experience Leader)の話題が増えた。
GELとは、世界のマクドナルドで導入が進む、サービスを担当するクルー(従業員)のことを指す。このブログでも何度か採り上げているが、ユニフォームに白いシャツ、赤いスカーフやネクタイを着用した、特別な存在である。
今回はこのGELが拡がる今の、私の思うところを書いてみたい。

マクドナルドが日本に上陸して半世紀あまり経った2017年。
目立った動きが無かったタイトル(職制)に新しいアプローチが始まった。GEL(通称ジェル)のスタートだ。当時は一部限られた店でだけ導入されていたので、私も始めてその存在を知った時にはとても驚いた。新宿ステパ店での出来事。

そもそも、ジェルとはどうして誕生したのか。
以前これも記事にしているが、日本にはSTARという客席サービスを主に担当する「お客様係」というタイトルがあったし、その者がおもてなしを担当すれば良いだけの事だ。そこにわざわざジェルを導入するには、ある訳があった。

日本のマクドナルドは、藤田田氏が日本にその「ビジネスモデル」を持ち込み、それを日本向けに「カスタマイズ」することで広く庶民に知れ渡った。一部の方は知っている事だが、マクドナルドとは正しい発音ではない。”McDonald’s”とは、本国ではマクダーナルとか、マクダーノォと発音するという。しかし、それでは日本人が言いにくいと感じ、藤田氏は「マクドナルド」という発音で統一し、日本中の店の看板も、”McDonald’s”というロゴではなくカタカナの「マクドナルドハンバーガー」で統一した。

20190104a

今思うととてもシンプルで平和な昭和のマクドナルド

言わば、日本のマクドナルドとは「ガラパゴス」な存在だった。今や世界企業として名高い存在となったが、昭和はそんな狭い日本の中だけで成り立つ存在だった。
インターネットが普及し、携帯電話で気軽に情報が取り出せる時代になり、社長は原田泳幸氏に交代する。彼はそんな「マクドナルド」を”McDonald’s”に変えていく試みを担った。そうする事で店先から「マクドナルドハンバーガー」の赤い看板は姿を消していく。ちょうどこの頃「新世代」とか「黒マック」と呼ばれる、赤と黄色のイメージを廃した店舗が多く誕生した。

171007c

世界の潮流に乗る経営体制に変容し店舗も一気にモダンになった

マクドナルドは日本の中だけで、日本人に合わせた事をしてきた。しかし、そんな世界展開の輪に加わり、少しづつ日本独自のものではなく、世界から様々な「新機軸」を持ってくるという経営に変貌していく。そして今に至るというわけである。
前回の記事にも書いたが、そんな「世界展開」によって、日本全国の店に「自動販売機」が設置されようとしている。今までのマクドナルドは「スマイル0円」にはじまる「接客」を売りにしてきた。しかし、そんな世界展開の中で誕生した「キオスク」という自動販売機も輸入して諸外国と足並みを揃える。そこで誕生したのが「ジェル」だ。

20190104c

海外の事例はGELの導入よりも先にキオスクが開始されている

実はもう2〜3年前からキオスクは世界で配備されていて、日本は大きく遅れをとっている。その「先」をいくマクドナルドは、キオスクのそばにジェルが立ち、大きいタッチパネルの画面操作に不慣れな客をアシストし、またテーブルにトレーを持っていく「テーブルサービス」を実施している。早くから採用されたヨーロッパ圏では、一般のクルーがそのアシスト役を担当していたが、ここにきてジェルに代わるようになってきた。詳しいことは知らないが、そこに世界統一の波があるのかもしれない。

2019年1月。日本でキオスクを見つけることはできない。しかし先行して採用したジェルは、順次導入されていくキオスクのアシストを行う担当となる事は明確だ。

そんなジェルだが、私はある事がとても気になっている。それは先にも触れたが、長らく日本型として増えていった「店舗」がジェルの導入にフィットしないという点である。

そもそもマクドナルドとは半世紀近く「セルフサービス」を軸にした店舗設計をしてきた。カウンターで注文、会計をして、商品を受け取り、自分で席まで持っていき、食事をする。ファミレスのようにワンフロア展開ではなく(ワンフロア展開もあるが都市部は少ない)、2階、3階、へたすると4階以上という店も存在する。その一例がこちら。

20190104d

階段の昇り降りはセルフサービス仕様でテーブルサービスには向いていない

これは、ある実在する都市型店舗のモデルである。道路に面した1階部分がカウンターで、ここで注文、商品受取りをして、階段でお好みの階、席に移動して、食事をする。今までは客がセルフサービスルールに則り、それを自分でしてきたが、これが新しいサービスを当て込むと、とても大変なのがわかる。

まず、最近始まったテーブルサービスをするために、カウンターでクルーが常時2名は待機して(お運び専門として)いなければならない。このぐらいの席数だと1名はありえない。ジェルは基本テーブルサービスを行わないらしく、そうなるとひたすら階段の昇り降りをする過酷なポジションが発生する。そしてジェルだが、この例のように3フロアともなると1名だとなかなかしんどい。2名としても階段の昇り降りもあるだろう。まずここで気になるのが「靴」だ。

20190104e

客室乗務員は5センチヒールでお迎えし、3センチヒールで機内サービスを行う

日本のジェルは、統一的に靴も支給しているようだが、踵が高いパンプスを着用している。立ち姿は美しいが、いざ動き回るとなると、かなり過酷ではないかなと思うし、階段の昇り降りには適さず、捻挫なども心配なところだ。
画像にあるように、例えばキャビンアテンダントなどのおもてなし系の他業種と比較してみると、ボーディングなどのお迎えの際は踵の高い靴を着用し、離陸後の機内サービスなどの作業時は、踵の低い靴を着用させている。これは動きやすさというのもあるが、揺れる機内での安全面も考慮しての事だ。
先にスタートしている諸外国のジェルは、インスタなどを見る限り「ペタンコ」な靴を着用しているケースが多い。こと日本のジェルは「高級感」を売りにしているそうだが、それがどうしても踵を高くしてしまうのだろうが、そこまでの「高級感」が必要なのかなと思うし、同時に「フレンドリーでペタンコ」でも良いのではないかな?と思ってしまう。

郊外型のドライブスルー店舗などは平坦なワンフロアータイプが多い。しかし、都市部はほとんどが「横に広く」ではなく「縦に長い」構造である。ファミレスのように、初めからテーブルサービスしやすい設計であれば良いのだが、マクドナルドは古い店ほど縦長である。2020年までに全店にジェルを導入すると聞くが、後付けで世界に揃えて始めるジェル、テーブルサービス、それらのおもてなしは、しっくりと、無理なく、全店で花開くのか、心配なところがある。

そして気になるのがSTARの存在だ。先に書いた通り、50年もの間、マクドナルドの「お客様係」だったスター。フロアサービスを長らく担当してきたが、今は人手不足の煽りを受けてか、ほとんどフロアサービスしている姿を見かけなくなった。どこに行ったかというと、悲しいかな、万能性を買われて難易度が高い「中」の仕事をしていることが多い。中とは客から見えない場所のことだ。今やそんな舞台裏での仕事がメインになり、特別なトレーニングを受けたSTARたちの胸内を考えると、何ともいえない気持ちになる。
そしてここがポイントなのだが、先に触れた「世界統一」を語ると、STARとは日本のマクドナルドだけにしか無い特別なタイトルだ。そこを世界に揃えてしまうと、STAR自体無くなってしまう可能性が高い。STARの襷はジェルに引き継がれるというのだろうか。

最後にこれは書いておきたい。
それは「高級路線」について。

マクドナルドのイメージは「安い」「賑やか」、あるいは「早い」だろうか。私はそれに「簡素」(サンドイッチが)だったり、「元気」(クルーが)という言葉を加えるだろう。長らくマクドナルドが売りにしてきたイメージは深く擦り込まれ、なかなかそのイメージを変える事は難しいだろう。
ジェルの目指すおもてなしとは「高級感」だと聞く。それは今までのイメージとは真逆のところにある。それが今の今、そこいらの店舗で「実現」できるのかだ。
店は多くの客で溢れかえり、座る席さえ確保できず、床にはポテトやレシートの類が散乱しているし、相変わらず店内では睡眠したり、無購入で長時間屯されたり、そういう客をコントロールできていない。
商品の質はどうか。そもそも冒険しないコモディティ化したシンプルバーガーが「高級」かと言われると、それは少し違うように思う。コーラにダブルチーズバーガーを高級感の中で頂くというのも、どこかこう浮いている。
では、ジェルがフロアで「高級なおもてなし」として何ができるのだろうか。例えばファミレスのウェイトレスが「お水を注ぐ」とか「コーヒーのおかわりを注ぐ」というような気の遣い方がマクドナルドで出来るかと言えば、装備的にもそれは無理だ。アイテムを駆使したとしても、それはペーパーナプキンとケチャップでしかない。
高級とは見てくれだけではない。それは「高級っぽい」に終始してしまう。かと言って、高級とは「手ぶら」で醸す事はとても難しい。ただそこに立っているだけで良いのであれば、いくらでも立ち振る舞いを、メイクを頑張れば良い。しかし、客に「高級だな」と思わせるには、どれだけジェルが頑張っても「背伸び」にしかならなくなってしまう。
今、マクドナルドはGEM(Guest Experience Manager)というサービスマネージャー的な管理者がいる。文字通り「客の良き店舗体験の創造」を担当する職制だが、高級感は疎か、ミリも笑わない、軍隊のようなGEMも多く見かける。

詰まる所高級感とは、総合的に醸されるハーモニーのようなものだ。
食事の質、清潔さ、それは当たり前で、それに笑顔とか気遣いとか、マニュアルには無い何か。その何かは、ただ「高級感を出せ」では発現しない。そして、今までのマクドナルドの経験値では到底形にできない。そこを「創造」することをこれからしなければいけない。

マクドナルドという会社は本当に仕事が多いと聞く。
正直なところ、バナナボートのような会社で、みんな振り落とされそうになりながら、必死にしがみついていて、自分のことだけで精一杯なのではなかろうか。楽しさを唱えるクルーがいる反面で、その過酷さにボートから振り落とされてしまうクルーもいる。そういう混沌とした心のままでは、なかなか周りを見ることができないだろうし、況してや高級感なんて考える余力も無いだろう。

これらの新体制を”EOTF”(Experience of The Future)と呼ぶそうだが、EOTFはマクドナルドの天と地をひっくり返す大革命だ。世界に足並みを揃えるだけではない、そこに新しい舞台があり、今は過去の事にこだわり続けるだけではなく、その舞台の準備を全員参加でする時なのだ。それは一人づつが変わること。仏頂面を変える、生産工程を見直す、サービス担当以外の仲間でアイデアを出す、疎かなラウンドを確実にこなす、小さな行動の集大成で「高級感」は芽を出すのではなかろうか。

それこそ、踵の高い靴はしっかり磨かれているか。
汚れていては高級ではない。
高級なおもてなしとは、伊達じゃない。

期待通りのマクドナルド八戸南類家店

業界関係者と対談するとたまに耳にしていた店「八戸南類家店」
今回は同店のクルーからもお誘いがあり、雪が降る前に行ってみようということで、盆休みの最中新幹線に乗って八戸まで行ってきた。今回は同店のレポートを書きたい。

マクドナルド八戸南類家店は、青森県の東側、太平洋にほど近いエリアに位置する。
本州でも限りなく北寄りで、冬は厳しい寒さが訪れる。

新幹線で3時間で行ける手軽さもあり、大阪や京都に行く気分で向かった。
人生で初めての青森はとてもワクワクする小旅行となった。

20180819a

八戸南類家店はドライブスルー(DT)併設の一般的な街道店だ。地域の大きなスーパーや店舗が集まる賑やかな地域に位置する。

いよいよ店内へ。
まず、視界に飛び込んできたのは、壁一面のイベントチックなコーナーだ。

20180819b
客人をお迎えするアットホームなコーナー

店舗建築は、最新から比べると二世代前のものだが、今の建築に比べると、このように造り付けの本棚であったり、ポスターなどの掲示物コーナーであったりと、飾り付けしやすいもので、他店でも、この世代の箱は店の「色」が出やすく、過去にも良いものを見つけたことがある。

中央はイベントでみんなが参加して作り上げた折り紙の生きものたちが集う海。
きっと参加した子供達は、自分が折った折り紙を認めて、喜んでくれる事だろう。
このコーナーを見ていると、おもしろいものを見つけた。

20180819c
小さいドナルド発見!

本棚には小さいドナルドが住んでいた。クルーの手作りだろうか、こういう小さいところにも店の温かみを感じる。
イベントについては以前にも記事を書いたが、全国的に縮小傾向にあって、目立ったイベントは行わないパターンが多い。そんな中で、イベント感があるのは大きなアドバンテージであり、家族での利用にはうれしいだろう。

店内はそんなに席数が多くない、割とコンパクトな印象。
朝マックの時間に入店したが、数名しか客もおらず、実にほのぼのしているなと思った。
最近流行りの大テーブルではなく、BOX席メインでカウンター席も無いから、この席をどうやって活かすのか興味深いものがある。ピークが楽しみだ。

20180819d
ファミリーを対象とした印象の店内

朝マックが済むと、ぼちぼちと店内も混み始めてきた。
ここからが八戸南類家店の腕の見せどころだ。

実は今回の臨店でひとつ確認したい事があった。
それは「テーブルサービス」だ。
今や直営店を中心に、少しづつ拡がりつつあるサービスだが、実は同店は直営が始める前から、独自のサービスとしてそれを展開してきたという。
どんな方法でそれをやっているのか、まずはそこに注目した。

オーダーをして、払いを済ませると、レシートを渡される。
何の変哲も無い普通のレシートだ。
そして「席までお持ちします」と言われたので、そのまま席に戻ると、程なくしてクルーがトレーを持ってきてくれた。
所謂「ウェイトカード」などの目印となるものは受け取っていない。しかし、クルーは迷う事なく私のオーダー通りの品を届けてくれた。
「コンパクトな店内」とは書いたが、実際そんなに席数が少ない訳ではないし、レシートだけでオーダーを当てるのは難しい。で、どうして分かるのかと尋ねてみた。

「お客様をオーダーの時に覚えてクルー同士コミュニケーションをとってるから迷わない」

というではないか!
例えば、オーダーを受けたクルーが届ける訳ではない。ランナーないしフロアのクルーがトレーを受け取ってお届けに行っている。だからどこかしらで「誰に届けるのか」を伝言しないと迷いが生じるだろう。そこを間違いなくスピーディーに届けられるというのは、オーダーと客を覚え、それをしっかり届けるという「心を込めた仕事」がそれを実現させるんだと思った。
一般的なマクドの姿は、ウェイトカードがあっても、それを見つけられずに右往左往してしまうものだし、私もそれが当たり前だと思っていた。ただそれが、ポテトなどのウェイトばかりで、一時的なものだと、いちいち全オーダーを覚えるには至らない。しかし、テーブルサービスで、全てのオーダーを覚える事に慣れていると、ウェイトカードに頼らずとも、クルー達のコミュニケーションだけで、お届けができてしまうのだ。これにはかなり驚いた。
昼ピークど真ん中でも、テーブルサービスはスムーズなコミュニケーションによって、間違う事なく行われた。

テーブルサービスに驚きながらも、届いたサンドイッチを食べていると、STARが席にやってきて、あるサービスをしてくれた。

20180819e
氷入りの冷水サービス!

何かのサンプリングかな?と思っていたら、冷水をお配りしている。
本当はお届けしてくれた素敵なSTARも一緒に写したかったが、トレーを置いてもらってのブツ撮りになってしまった。こういう時のクルーのスマイルとか、そういうのはなかなか言葉では伝えにくいだけに残念だが。
味がしつこいサンドイッチの場合、ドリンクではなく水を飲みたい時がある。こと今開催している「ご当地グルメバーガー祭」を今回実食したが、味が濃くて口の中をリセットしたくなる。こういうサービスも始めて見るし、一歩前に出た心配りを感じる。

そう。この店でまず特筆すべきこと。
それはSTAR(お客様係)の秀逸さだ。

細かいところを見つけるのが私の悪い癖だが、STARの心のこもった仕事を見逃していない。
例えば、まず客の入店。
STARがフロアのクルーに合図を送っている。何かな?と思ったが、ドアを開けることを促していた。開き戸なので手動なのだが、子供が開けにくい、赤ちゃんを抱いているとママも開けにくい。多分そういう視点なのだろう。入り口でドアを開けてくれている。
ドアをくぐると、まずSTARが席に誘導している。そして、ハードカバーのメニューを手渡す。
なるほど!カウンター前で立ってメニューを選ぶのではなく、一旦着席してもらって、そこで選んで、一人でオーダーに行ってもらい、払いが済んだら席までトレーをお届け。
ファミリー客を意識している中で、STARが決して合理的なだけに帰結せず、思いやりをもって客をお迎えし、痒いところに手が届く、ホンモノのテーブルサービス、バリューの実践があると見て取れた。
STARの圧倒的なラウンド数も忘れてはいけない。

他にもその秀逸さを感じた。
例えばウェストポーチに、いつもおしぼりを携行している。
だから、客を見て必要だなと判断した瞬間に、ササッと取り出せる。
ラインメイクでも、ハードカバーのメニューを差し入れるのはよく見かけるが、人数に応じて、数冊渡したりというのは初めて見た。
そこには、「やらされているフロアサービス」ではなく、自分から生み出す上質なサービスへのこだわりを感じる。前回のこの記事に書いた、「感じること」が醸すサービスの姿だろうと思う。

20180819f
小さなところにも心配りがある店内

STARだけが凄い!というわけではない。
この店のスペックは、目ざとい私の観察眼には、他の部分にも感じるものがあった。

この店のネームプレートは、CREWはアバターの入る大きいもので、トレーナーから黒地に平仮名のRDM導入店舗のデザインになる。一般的だったグレーのトレーナー仕様ではないが、この店のトレーナーはみんな専用のピンズをしている。

20180819g
襟元に光るトレーナーの証

一般的にはSTARから見ると、少し青シャツのCREWは劣るような印象はある。マクド1年生もそれにあたり、どことなく無邪気さがあるものだ。
しかし、”TRAINER”と刻まれたピンズを着用している青シャツのCREWは、明らかにそれとは違う端正さを感じる。
STARに引けを取らないアピアランス、スマイル、そしてお辞儀の丁寧さ。まだ高校生ほどの女の子が、こんなにしっかりとした出で立ちで働いている。
勝手な思い込みだが、”TRAINER”ピンズは、きっとプライドの証であり、モチベーションを高めているようにも感じた。

プレップライン、DTランナー、シフトマネージャー、それぞれに楽しそうで、辛そうな顔を一人も見つけることはなかった。全体的に楽しそうで、自然な笑みが溢れるし、悪い意味ではなく、少しジョークを言えるほどの余裕を感じる。
それを実現させているのは、おそらく適正を活かしたポジショニングだろう。昼ピークは店長も厨房に入り、黙々と仕事をしていたが、働いているクルーのことをよく見ているんだと思った。そして、持ち場のミスマッチが起きないようなコーディネーションで、布陣を組んでいるという印象がある。
また、PDMの動きが素晴らしい。中のムードを高め、客にも常に目を向け、コミュニケーションを闊達にし、常に目が笑っている。もしかすると、店のムードをつくる張本人かもしれない。

一日通して店舗体験して、色々な驚きがあったが、総論を書く。
押し付けられた、マニュアル通り、そういう店ではないのがよく分かった。
テーブルサービスを基点とし、何をすれば客が喜ぶのかを、みんなで考え、実践し、それを磨いている。
それがわかるのが、クルーの動きだ。もう動きたくてウズウズしているのが見ていても分かる。それはもう、仕事としての義務感を超えているし、その楽しそうに働く様は、もしかしたら日本一それが輝いている店のような気がしている。
無理が蔓延る現場では、色々な問題が起きる。特にそれは品質に表れやすい。同店でピークタイム含めて観察していたが、取り揃え違いやコンディメント忘れなどのクレームは皆無だった。だいたいどこの店でも何回かはそういうシーンを見かけるが、それが起きないのも、おそらく「気持ちの余裕」が原点にあるのではないだろうか。

タイムを縮めること、回転率を上げること、そこにフォーカスしている店は多い。
一時的なキャッシュは生まれる。そして数字は上がる。しかし、品質、顧客満足、そして何よりクルーの働きやすさ、それを殺すものになっているという本質を知らない。
より実利を求めることで、結果として損失しているのだ。
時計が早い店の管理者からすれば、同店は遅いかもしれない。しかし、早さだけが売りの店に無い良さが凝縮している。

そう。クルーから「店という場所への愛着」を感じる。
それがなければ、ここまで光り輝く事は無いだろう。

そして、もう一つ。
この店に、たまたま先に示したような、優秀なクルーが揃ったのだろうか?
そんな偶然があるのだろうか?
少しかっこいい事を言うが、良きクルーとは、店で育つのだと思う。
箱としての環境、仲間としてのピープル、自分の志。
それらが反響し合い、一人ひとりのポテンシャルを高める。だからこそ、本当のシップ(船)とクルー(乗組員)としての一体感。安定感。バリューが生まれるのだろう。
それがよく理解できた臨店となった。

最後に、店のイベントに私も参加して、クレヨンを借りた。

20180819h
今日の思い出を…

20180819i
即掲示♡

ちびっ子に紛れて、私の夏の絵日記を掲示してもらった。
この日記にお世辞は無い。余韻ある店舗体験で沢山の笑顔で英気を養えた。

最後に、お誘いくださったクルーのTさん。
私の熱きマックバカトークを聞いてくれた店長。
素晴らしいクルーの皆さん。
良い夏の思い出をありがとう。またいつの日か。